ベテラン警察犬が行方不明になった70代男性を無事に発見し、警察署から感謝状が贈られた。

 人間の1億倍まで感知できる嗅覚(きゅうかく)を生かし、遺留品から犯人の足取りを追う――。そんなイメージの強い警察犬でも、不明者を無事に見つけるのは異例なのだという。

 昨年11月上旬、宮城県警塩釜署署長室。飼い主の安倍秀一さん(71)と並んだジャーマンシェパードの「ハッピー」(雌、8歳)は、感謝状に目もくれず、副賞のほね型ガムにかぶりついていた。

においをたどって人を探す「捜索犬」として、事件捜査や行方不明者捜索など年間20回を超える出動要請に応じる。警察犬になって6年目で表彰経験もあるベテランだ。そんなハッピーでも無事に不明者を発見できたのは今回が初めてだという。

 塩釜署から要請があったのは昨年10月12日午後10時半過ぎ。「七ケ浜町で70代男性が行方不明になった」という内容だった。

 風がなく小雨が降る夜だった。「においが地面付近にとどまりやすく、捜索犬にとっては好都合の天候」と安倍さんは振り返る。

ハッピーは安倍さんに連れられ仙台市内から現場に向かった。地元の警察署員らとともに男性が入所する高齢者施設を出発してから約50分。立ち止まったのは200メートルほど離れた漁港そばの路上だった。安倍さんが辺りを懐中電灯で照らすと、コンクリート塀の向こうに男性を見つけた。名前を確認し、けががないと分かると安堵(あんど)が広がった。

 安倍さんは長年、県警の鑑識課員として勤めてきたOBだ。捜査に役立てようと、県警の非常勤職員として再任用されるなか、2013年にハッピーを飼い始めた。両親はともに警察犬で競技会の優勝経験もある。

 ハッピーは今や、県警の審査なしで警察犬の資格が与えられる「名誉嘱託犬」だ。それでも安倍さんと毎朝1時間、草地と違ってにおいがとどまりにくいアスファルトの駐車場などで訓練を重ねる。その成果が今回の発見につながったようだ。要請から約30分という迅速な出動も功を奏した。

 安倍さんは「ハッピーな結果になるようにと願って名付けた。無事発見できてよかった」。今後も出動要請に積極的に応じたいという。
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