下野新聞

小さな骨つぼが命の尊さを静かに訴えている。栃木県宇都宮市の陽西中3年の古口青波(こぐちせいは)さん(15)は昨年、車にひかれたとみられる子猫を保護した。助からなかったが、姿を変えても「家族の一員」と大切に思い続けている。交通事故などの犠牲になる猫は、1〜3月に急増する。活動が活発になる繁殖期と重なるためで、動物愛護団体は「猫には必ず避妊去勢手術を行い、家の中で飼ってほしい」と呼び掛けている。

 歩道にうずくまる子猫を見つけたのは、ジョギングで通りかかった駒生町の宇都宮環状線。「大丈夫か」。体をそっと揺すると、子猫は目を開け、立ち上がろうとした。「(治療費は)俺の貯金を使って。足りない分はゲームを全部売るから」。青波さんは母親の友香(ゆか)さん(48)を、そう説得したという。車で動物病院へ向かう途中、子猫は頭を上げ、ニャア、ニャアと2度鳴いた。「助けるからな」。青波さんは心でつぶやいた。

 生後約1カ月のメス。名前は「花菜(はな)」に決めた。「道に花が咲いたように、そこだけ、すぐに分かったから」。だが翌日、病院に迎えに行くと、花菜はタオルにくるまれていた。火葬後、目を腫らした青波さんの胸に戻ってきたのは、湯飲み茶わんほどの骨つぼだった。

 青波さんは家族が集うリビングに骨つぼを置いた。時折、胸に抱き、優しくなでて、願う。「花菜のように交通事故の犠牲になる猫がいなくなってほしい」

 市の委託を受ける市内清掃会社によると、車にひかれるなどして死んだ飼い主不明の猫の2020年の回収数は市内で1万429匹。全体の4割が1〜3月に集中している。

 春にかけて繁殖期のピークを迎えることから、日本動物福祉協会栃木支部の川崎亜希子(かわさきあきこ)代表は「避妊去勢手術をしないと鳴き声が大きく、マーキングをして室内飼育が難しい。両輪の取り組みが必要」としている。

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