公的病院(非営利病院含む) 民間病院

日本   約20%           約80%
アメリカ 約75%           約25%
イギリス 大半            一部のみ
フランス 約67%           約33%
ドイツ  約66%           約34%

なぜ民間病院がこれほど多いのかというと、単純に「儲かるから」なのです。厚生労働省の「医療経済実態調査」では、開業医や勤務医の年収は、近年、おおむね次のようになっています。

開業医の収入は勤務医の2倍

開業医(民間病院の院長を含む) 約3,000万円
国公立病院の院長        約2,000万円
勤務医             約1,500万円

ここでいう開業医というのは、民間病院の院長から、地方の小さな民間診療所の医者も含まれます。つまり大小ひっくるめての平均が、勤務医の2倍もあるのです。

しかも開業医というのは、国公立病院の院長よりもはるかに高いのです。国公立病院の院長というと勤務医にとってはなかなかなれない憧れのはずです。また相当、能力もあり、努力もしなければ、国公立病院の院長にはなれないはずです。そういう憧れの存在である国公立病院の院長よりも、開業医の平均収入の方が1.5倍も多いのです。開業医の「トップ」ではありません。開業医の「平均」が、国公立病院の院長よりもはるかに高いのです。開業医の収入がどれだけ大きいものであるか、これでわかっていただけたと思います。

そして、なぜ開業医の収入がそんなに高いのか、というと、開業医には特権がたくさんあるからなのです。

たとえば同じ診療報酬でも、公立病院などの報酬と民間病院(開業医)の報酬とでは額が違うのです。同じ治療をしても、民間病院の方が多くの社会保険報酬を得られるようになっているのです。ほかにも開業医は高血圧や糖尿病の健康管理をすれば報酬を得られるなどの特権を持っています。

また現在、多くの地域で、国公立病院に行く場合は、開業医の紹介状が必要ということになっています。紹介状がなく国公立病院に直接行った場合は、初診料が5,000円程度割増しになったりするのです。だから、国民は病気になったとき、一旦、開業医に診てもらうことになるのです。

つまりは日本全体の医療費の多くが開業医に流れるようになっているのです。こういうシステムがあるので、開業医は勤務医の2倍もの収入を得られている
のです。

この日本医療のシステムは、まったく不合理なものです。

日本最強の圧力団体「日本医師会」とは?

なぜ開業医がこれほど優遇されているのかというと、という日本医師会という強力な圧力団体があるからなのです。

日本医師会は、日本で最強の圧力団体と言われてますが、この団体は医者の団体ではなく、開業医の団体なのです。日本医師会という名前からすると、日本の医療制度を守る団体のような印象を受けますが、実際は開業医の利権を守る団体なのです。

現在、日本医師会は、「開業医の団体」と見られるのを嫌い、勤務医への参加を大々的に呼びかけており、開業医と勤務医が半々くらいになっています。が、勤務医が日本医師会に入るのは、医療過誤などがあったときの保険「日医医賠責保険」に加入するためであることが多いとされています。

勤務医の大半は、「日本医師会が自分たちの利益を代表しているわけではない」と考えているようです。

また日本医師会の役員は今でも大半が開業医か民間病院の医師であり、「開業医の利益を代表している会」であることは間違いないのです。

この日本医師会は自民党の有力な支持母体であり、政治献金もたくさんしているのでとても強い権力を持っているのです。そのため、開業医は、様々な特権を獲得しているのです。そして、その特権を維持し続けているのです。

「勤務医より開業医の方がはるかに儲かる」という事実は、日本の医療制度を歪めたものにしています。現在、日本では、国公立病院の勤務医が不足しているという現状があります。特に、救急医療などの人々の生命に直結する分野で、医者が足りていないのです。これが、日本の新型コロナ対策を逼迫させた大きな要因の一つなのです。そして、このことのせんじ詰めれば「開業医優遇制度」に行き着くのです。

開業医に集中している医療費を、医者全体に分散すれば、勤務医になる人も増えるはずです。勤務医の人手不足も解消されるはずです。

https://www.mag2.com/p/news/483526/4