<ロシアが、米議会襲撃などアメリカの政権交代に伴う混乱に乗じたプロパガンダ作戦を開始>

ロシアの外交官たちは、ロシアにより敵対的なスタンスをとるとみられるジョー・バイデン政権の誕生を目前に控え、また1月17日にロシアに帰国した反体制活動家のアレクセイ・ナワリヌイが即座に身柄を拘束されたことで国際社会からの非難にさらされて、米国内の混乱に形勢逆転のきっかけを掴もうとしている。

ドナルド・トランプ米大統領が大統領選での敗北を認めず、1月6日には遂にトランプ支持者が連邦議会議事堂を襲撃する歴史的大事件に至ったことを、アメリカと敵対する者たちはアメリカの民主主義の「凋落」だと嬉々として見物し、利用機会を探している。

ニセ情報の拡散や大衆扇動といえばそれこそお家芸ともいえるロシアの外交官たちは、バイデンの大統領就任を待たずに攻勢に出た。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は17日、バイデン次期政権下で迫害されることを恐れるトランプの支持者たちから、ロシアの市民権を取得したいという問い合わせがあると語った。発言の背景には、米国内の政治的対立を煽る狙いがあるとみられる。

議会議事堂乱入事件で悪いのは「アメリカの民主主義」

国営タス通信によれば、ザハロワはロシア第1チャンネルのインタビューの中で、「ソーシャルネットワーク経由で私の元に寄せられるコメントで最も多いのは、ロシアの市民権を取得するにはどうすればいいか、という質問だ」と述べた。自分に連絡してくるのは主に共和党の支持者だと彼女は言い、彼らはバイデンからどんな扱いを受けるのかを恐れていると主張した。

ザハロワは6日の議事堂襲撃事件の翌日、悪いのは選挙結果を覆そうとした極右のトランプ支持者ではなく、アメリカの民主主義だと批判した。「アメリカの選挙制度が古く、現代社会の民主主義の基準に合っていないことが、さまざまな不正の余地を生んでいる。そしてアメリカのメディアは、権力闘争の道具と化している」と彼女は語っていた。

自分たちが迫害されるのではないかというトランプ支持者たちの恐怖は、ツイッターやフェイスブックなどの主要なソーシャルメディアが事件後、トランプや過激な活動家たちのアカウントを凍結したことや、議会議事堂に乱入した者たちが次々に逮捕・訴追される様子から、ますます強まっているという。

迫害を恐れてアメリカからロシアに逃れた人物といえば、最も有名なのがエドワード・スノーデンだ。スノーデンは米国家安全保障局(NSA)による違法な大規模監視システムの詳細を記した機密文書を暴露した後、米政府の訴追を逃れるためにロシアに亡命した。スノーデンをかくまったプーチンは、ロシアを「権威主義や政府の権力乱用と闘う者たちの避難所」とアピールすることに成功した。

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プーチンの熱心な支持者たちは、米議事堂襲撃事件をこぞって批判した。ロシア下院外交委員長のコンスタンティン・コサチョフはフェイスブックに「民主主義の祝賀は終わった」と投稿。世界の民主主義の手本を自認してきたアメリカの主張はくじかれたと主張した。(デービッド・ブレナン)

ニューズウィーク日本版 1/19(火) 18:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20210119-00010001-newsweek-int
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