生活困窮者を支援する一般社団法人「つくろい東京ファンド」(中野区)が年末年始に実施した調査で、生活が苦しくても生活保護を利用しない人の三人に一人がその理由を「家族に知られるのが嫌だから」と回答した。生活保護を申請すると基本的に、自治体が申請者の親族に「援助してもらえないか」と尋ねる「扶養照会」が行われるが、団体は「有害無益だ」と訴えている。 (中村真暁)
 
生活保護法は、生活保護より父母やきょうだい、子など親族による扶養を優先する。各自治体は、明らかに扶養できない事情がある人や長年交流が断絶している人、DV被害者などを除き、仕送りなどで援助できるかを問い合わせている。

 団体は十二月三十一日〜一月三日、豊島、新宿、千代田各区内で開いた支援会場で、相談に来た百六十五人に聞き取り調査をした。生活保護を現在、利用していない百二十八人に理由を聞くと「家族に知られるのが嫌だから」と四十四人(34・4%)が答えた。一方で「親族に知られることがないなら利用したい」と答えた人は五十一人(39・8%)だった。

 自由回答では「家族から縁を切られると思った」「今の姿を娘に知られたくない」「扶養照会があるから利用できない」とする声が寄せられた。家族が援助を申し出たため保護申請が却下されるも、実家では面倒を見てもらえず、路上生活に戻った人もいた。

 同団体の稲葉剛代表理事は十六日にオンライン会見を開き、「コロナで困窮した人に生活保護をお勧めしても忌避感を示す人は多く、課題になっている」と説明。扶養照会によって、援助を受けられた事例が極端に少ないことを示す他団体の調査結果も挙げて「大きな阻害要因だと浮き彫りになった。ほとんど意味は無く、やめてほしい」と訴えた。

 同団体は同日から、扶養照会は申請者が事前に承諾し、明らかに扶養が期待される場合に限るよう求める署名をサイト「チェンジドットオーグ」で募っている。サイト内で「扶養照会」と検索。
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2021年1月22日  東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/81323