「変異種これから席巻」米国が発した緊急警告 The New York Times


アメリカ疾病対策センター(CDC)は1月15日、イギリスで初めて確認された極めて感染力の強い新型コロナウイルスの変異種が
3月までにアメリカを席巻し、感染者数および死者数のすさまじい増加と医療のさらなる逼迫をもたらす可能性が高いと警告した。

当局から厳しい予測が示されたことで、ここ何週間と渦巻いていた懸念が本物であることが明白になった格好だ。
アメリカでは、ワクチン接種が時間との闘いになっている。

変異ウイルスが全国に広がる前に少しでも多くの国民にワクチンを接種しておく必要性が高まっている。


すでに限界に達している病院や介護施設にとっても、CDCの予測は極めて暗い影を落としている。
医療機関や介護施設では職員の感染率が高まり、人手不足が深刻化。そうした中で患者数が増加しているため、
職員の対応が追いつかず、診療に支障が出る場面も出てきている。

「この変異ウイルスは一段と感染力が高く、今後何週間かでアメリカの感染を急激に増加させる可能性がある。
このことに私たちが深い懸念を抱いていることを強調しておきたい」と、CDCのジェイ・バトラー感染症部門副部長は語った。

「私たちは警告している。パンデミックはまだ終わっておらず、闘いを諦める段階に来ているわけでも断じてない。
皆さんには、そのことをしっかりと理解していただきたい」

あるCDC職員は、新たな変異ウイルスの感染力には個人的に「ぞっとした」と漏らす。
これは緊急事態であり、直ちに感染予防措置を徹底しなければならないと話す。

CDCが公表した報告書からも、強い危機意識が感じられる。ある報告書には、高速道路の緊急標識のイメージが用いられた。
新規感染の増加、医療の逼迫、感染力を強めた変異ウイルスについて警告を発するためだ。

「もっと(ウイルスが)拡散し、もっと感染者が増え、もっと死者が増える」と、同報告書は警鐘を鳴らす。
アメリカのコロナ感染者数と死者数は連日、過去最高を塗りかえており、1日当たりの死者数は12日に4400人を突破した。

CDCが新たに公表したデータによれば、アメリカでは昨年、860人に1人がコロナで死亡した。
とはいえ、死亡率は人種、民族、地域によって偏りがあり、被害が深刻な地域にワクチンが届かないのではないか、といった懸念も出ている。
こうした地域では医療へのアクセスが限られ、ワクチンに対する不信感も強い。

コロナの被害は有色人種の間で一段とひどいものとなっているが、人種による健康格差は新たな変異ウイルスによって
悪化に拍車がかかる恐れがある、と警告する専門家もいる。

「新しい変異ウイルスで脅威は何倍にもなった。コロナについて私たちが知っている全リスクが一気に何倍にも膨れあがったと考えてもらいたい」。
こう話すのは、ブラウン大学公衆衛生大学院のアシシュ・ジャー学部長だ。ジャー氏は、ワクチンが弱者に届いていない状況に懸念を示している。

CDCの今回の報告は、この変異ウイルスがアメリカでどれくらい急速に広まるかを科学的に予測したものだ。
人口の10〜30%がすでにコロナの免疫を獲得し、さらに1月から1日当たり100万人のペースでワクチン接種が進むとの前提で数理モデルを組み立てている。

イギリスのデータが示唆するように、この変異ウイルスの感染力が従来のウイルスに対し50%ほど高まったと仮定した場合、
3月には変異ウイルスによる感染が支配的なものになる、との予測結果が示された。ワクチンの接種ペースが前提を下回れば、そのタイミングはさらに早まるという。

しかし、現在のワクチン接種は前提を下回る状態が続いている。
https://toyokeizai.net/articles/-/405861

アメリカでは変異ウイルスが3月に席巻し、さらなる犠牲者が出る可能性が取りざたされ始めた(写真:Jim Wilson/The New York Times)
https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/1/a/1140/img_1aa1b0c6e8be5a9856b43301195aa43e270426.jpg