産経新聞

2度目の緊急事態宣言が出されている大阪府では、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがきかず、医療従事者は過酷な環境に身を置き続けている。コロナ専門の大阪市立十三市民病院(同市淀川区)では、70代以上の患者の割合が約9割まで上昇し、介護的なケアを含めて看護師らの負担が増大。コロナ禍が長期化する中、スタッフのモチベーション維持も課題となっている。(小泉一敏)

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 「高齢の入院患者が多く、ケアにかなり手がかかる状態だ。看護師らの目が届かない危険があり、70人程度しか受け入れられないと判断している」。西口幸雄院長はこう話し、病床の現状に危機感を示す。

 同病院は昨年5月から全国初の中等症専門病院として稼働。コロナ患者用の90床のうち、実際に使用しているのは約70床にとどまり、入院者数は同12月中旬から60人前後で推移する。

 昨年末の時点で、70代以上の入院患者は全体の約7割だったが、1月18日には64人中56人を占めて87%まで上昇。同病院の死者は、入院患者に若い世代が比較的多かった昨年7〜9月の第2波までは4人だったが、昨秋以降の第3波では19人が亡くなっている。

 高齢の患者が急増する背景には感染者数の拡大もあるが、高齢者施設でのクラスター(感染者集団)発生も大きな要因とみられる。

 府によると、府内の高齢者施設でのクラスターは第2波では20件だったが、第3波では4倍超の87件発生し、計1552人が感染(昨年10月10日から今年1月18日)。同期間に判明した府内全体の死者523人のうち、高齢者施設関連は25・2%の132人、70代以上は91・4%に上った。

 西口院長は「軽症や無症状の人は家庭で療養することもあるが、施設の高齢者は行く所がなく、持病がある人も多いので十三市民病院に来る」と説明する。

 看護師らは、高齢者の患者に対してはコロナ対応だけでなく、食事や排泄(はいせつ)、病床で姿勢を変えるための世話など、高齢者施設と同様の福祉的なケアも求められる。

 西口院長は「患者のみとりでは(容体を)観察して悪くなるのをずっと見ているし、亡くなった後に納体袋に入れるなど処置も特殊だ。看護師の身体的、精神的な負担は以前よりずっと増している」と訴える。

 こうした状況下で、スタッフのモチベーション維持が喫緊の課題となっている。コロナに直接効く薬がないため、西口院長は「僕らは、血糖のコントロールと褥瘡(床ずれ)を治すことくらいしかしていない。なんで医者になったんだろうと思っているスタッフもいると思う」と語る。

 コロナ以外の医療活動はままならず、研究成果を発表する学会も中止に。これまで当たり前だった日常が消失し、医師や看護師らは同じメンバーで変化に乏しい日々に疲弊、閉塞(へいそく)感に包まれる時期もあったという。

 西口院長はスタッフのモチベーションを保つ方法を模索しているといい、「自分も感染するかもしれないのに一生懸命に使命感だけでやってくれている。先が見えてくる春ぐらいまで、頑張ってほしいと呼びかけている」と話す。

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