新型コロナウイルスの感染拡大で、仕事が大幅に減り、経済的に困窮するパート・アルバイト女性が急増している。
野村総合研究所の推計によると、仕事が5割以上減り、休業手当も受け取っていない「実質的失業者」は2020年12月で90万人に及ぶ。
国や自治体の支援からこぼれ落ち、孤立している実態があり、早急な支援体制が必要だ。【毎日新聞経済プレミア・渡辺精一】

 ◇6割超「生きていくのが難しい」

 野村総研は20年12月、パートやアルバイトで働く20〜59歳の女性5万5889人の就労実態を調査した。

 パートやアルバイトは、働く曜日や時間帯などで業務量(シフト)を調整する「シフト制」を取ることが多い。
新型コロナの影響でシフトが5割以上と大幅に減った人は全体の10.4%で、そのうち4人に3人は休業手当を受け取っていなかった。全体では7.7%にあたる。

 収入が大幅に減ったのに、公的支援を受けていないため、統計上の「休業者」や「失業者」に含まれず、その存在が見えにくくなっている。

 野村総研はこうした女性を、その実態から「実質的失業者」と位置づけた。
総務省「労働力調査」によるとパート・アルバイト女性は1163万人(20年11月)おり、実質的失業者は全国で90万人と推計できるという。

 また、実質的失業者を加味すると、女性の失業率は5.2%となり、実際の失業率(2.3%)を2.9ポイントも押し上げることになるという。

 こうした実質的失業者の6割は、コロナ禍前でも世帯年収400万円未満。
自らの収入が家計を支えているケースは多く、実際、5割近くは世帯収入が半分以上減っていた。

 食費を減らしたり、貯蓄を取り崩したりして、しのいでいる状況だが、8割近くは、将来の家計への不安を感じることが増えたと答えており、6割超は「この先、生きていくのが難しいと感じることが増えた」とする。

 ◇休業手当「知っている」は2割

 労働基準法は、企業側の事情で休業する場合、平均賃金の6割以上の休業手当を支払うことを義務付ける。
企業が休業手当を支払う場合、国はその原資として、企業に雇用調整助成金を出して支援する。

 休業手当は働く人すべてが対象で、パート・アルバイトでシフトが減って休業する場合も含まれる。
だが、シフトが減ったパート・アルバイト女性で自分も支給対象と知っているのは2割にとどまる。

 資金不足であったり、申請書類が作成できなかったりすることを理由に、休業手当を支払わない企業もあるため、国は、新型コロナ対応の休業支援金・給付金を設けた。
休業手当を受け取れなかった中小企業で働く人を対象に休業前の平均賃金の8割(上限1日あたり1万1000円)を休んだ日数分支給する。

 だが、シフトが減ったパート・アルバイト女性で、休業支援金・給付金を知っていたのは1割強で、知っている人でもその9割近くは申請をしていない。
「自分が申請対象かどうか分からなかった」という理由が多い。

 ◇パート・アルバイト「専用相談窓口」を

 調査を担当した野村総研の上級コンサルタント、武田佳奈さんは「パート・アルバイト女性が支援から孤立していることが改めてわかった」と話す。

 休業手当やそれを支援する雇用調整助成金、休業支援金・給付金など、仕事が減った場合への支援策はあり、国や自治体は、生活に困窮した人の支援や、生活保護のための窓口も用意している。

 だが、以前は収入があり生計が成り立っていたのに、コロナ禍で急に生活が困窮した人にとっては、こうした支援は縁遠い存在で、それに気づきにくい現状がある。

 パート・アルバイト女性は、飲食・サービス業で働く人が多く、年明けからの緊急事態宣言を受け、さらに仕事が減った可能性は高い。
野村総研は、パート・アルバイトで収入が減り生活が困窮した人を対象とした相談窓口の設置や、実態を踏まえた応急的な貸付・給付制度などを提案する。

 支援が必要であるにもかかわらず届いていない人たちに、国や自治体が積極的に働きかけ、情報や支援を確実に届けることが求められている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0e4e464b025de8d24dfd886a361a5adaff071609