※デイリー新潮

マンション販売戸数が激減

 コロナ禍で郊外の戸建て住宅の需要が急増しているというが、実際に移住した人々はどのように暮らしているのか。昨年12月に『激震!  コロナと不動産』(扶桑社新書)を上梓した住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、都内から木更津や三島に移住した人々に取材した。

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 コロナ禍の真っ只中の2020年5月、首都圏新築マンション発売戸数(不動産経済研究所による発表)が、前年同月比82・2%減の393戸となり、業界に衝撃が走った。単月としては1973年の調査開始以来、最少である。緊急事態宣言でモデルルームの休止が相次いだことの影響もあると見られるが、同研究所は「日経新聞」の取材に対し、今年通年の発売戸数が3万戸を下回る可能性が濃厚で、2万戸割れもあり得ると答えており、コロナショックが長引く可能性が示唆されている。

 2020年上半期の発売戸数も8851戸となり、前年同期比で26・2%のマイナスとなった(同、不動産経済研究所)。下半期は回復傾向にあるものの、第3波の到来で2021年以降また減少することも考えられる。

郊外の戸建て人気が上昇
 そんな不振に陥るマンション市場を尻目に堅調をキープしているのが戸建て市場だ。東京カンテイが公表した2020年6月の首都圏新築小規模戸建て住宅の平均価格は、前月比1%増の4517万円と3カ月ぶりに上昇したのだ。

 また、不動産情報サービス「アットホーム」が公表した同年9月の「首都圏における『新築戸建』の価格動向」を見ると、特に価格上昇が顕著なのが埼玉県や千葉県などの「郊外」だ。中でも、千葉県の西部を除くエリアでは、5月以降の伸びが継続しており、前年同月比6・3%増と大幅な上昇となっている。

 コロナ禍によるマンション離れが進む一方、戸建てに注目が集まっているといえるかもしれない。首都圏の住宅販売に強いオープンハウスも好調さをアピールする。

「4〜6月における、神奈川・千葉・埼玉の商圏内の当社戸建て仲介販売・新規契約数は、前年同期比でプラス20%と需要が増えています。広く指摘されている通り、リモートワークや外出自粛で在宅時間が増え、自宅が手狭に感じて住み替えを検討する方も少なくないと思います。加えて、年収が上がらないのではという危機感を抱える人が、ローンが組めるうちに住宅を購入しようという動きも背景にあると見ています。外出自粛によってレジャー出費が貯蓄に回り、それをローンの頭金の一部として活用しようという方もいます」(広報担当者)

阿佐ヶ谷から木更津へ
 こうした「集合住宅から戸建て」という需要の変化は「都心から郊外」につながっていく。都心のIT企業に勤める梨田憲一さん(仮名・34歳)は最近、東京・杉並区から千葉県木更津市に引っ越した。

「ウチの会社では、リモートワークが今後も継続することとなり、出勤は基本週2回でよくなった。だったら、高い家賃を払って東京にいなくてもいいと思って、引っ越しを決めました。これまでは阿佐ヶ谷の月12万円の2DKに、妻と2歳の子の3人暮らしだったのですが、家で仕事するなら書斎も必要になってきます。そこで見つけたのは、築25年、130平米の2階建ての、家賃7万5千円の中古戸建てです。内見時に子供が楽しそうに庭で走り回ったことが決め手でした。ちなみに、うちの子の保育園には、私たち家族のように都心から移住してきたという家の子供が少なくともほかに2世帯いますよ」

 実は木更津は都心へのアクセスも悪くないという。

「最寄りの君津駅までは徒歩15分なのですが、そこから職場の東京駅までは特急で1時間。高速バスに乗れば新宿や羽田空港にも直通です。以前は、20分ちょっと満員電車に揺られて通勤していましたが、特急電車や高速バスなら必ず座れて仕事もできる。ストレスの低さは段違いですよ。駐車場もついているので、50万円くらいの中古車を買ったとしても、以前より生活コストは断然低い。今の家は5年間の定期借家なのですが、それまでにこの付近で一戸建てを購入するつもりです。条件としては、子供とキャッチボールできて、家庭菜園も楽しめるくらいの庭があれば。東京では夢みたいな話ですが、ここならわりと簡単に実現が可能です」

5LDKで360万円
 筆者が梨田さんの住む君津駅周辺で中古戸建てを検索したところ、駅から徒歩11分、築40年、土地面積200平米の2階建て4LDKが400万円という破格の値段で出ていた。さらに、駅から徒歩20分を覚悟すれば、築35年、土地面積240平米2階建ての5LDKで、360万円という物件もあった。

全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/0646e277f9bf05078fac367b4c052b708ea01948