新型コロナウイルスのワクチン接種の対象は、16歳以上の約1億人。

1994年の予防接種法改正以降、集団接種はほとんど行われておらず、
今回は「日本の医療の歴史上、最大のプロジェクト」(自民党幹部)とも指摘される。

高齢者への接種開始予定までは、残り2カ月余り。
27日に川崎市内で行われた集団接種の初訓練では、課題も見えてきた。

訓練会場の川崎市立看護短大の体育館に、本番と同様、接種室などが設けられた。
接種を受ける市民役は、ワクチンを供給する予定の米ファイザーが用意した20人。

受け付け、病歴やアレルギーの有無などを問う予診(問診)、接種、経過観察までを行い、
一連の流れを、市や厚生労働省の担当者らが確認した。

訓練で浮かび上がったのは、問診時間の問題。訓練の1人目が接種を終えるまでにかかった時間は13分。
2人目以降は問診の待ち時間などが影響し、最長で26分かかった。

同短大の坂元昇学長は「接種前の問診でいろいろと質問され、医師が1つ1つに答えると、時間がかかる」と話し、
滞りなく接種を進めるには、別に相談コーナーを設ける必要があると指摘した。

ファイザーのワクチンは3週間後に2度目の接種が必要。

厚労省は、人口10万人、高齢化率27%の自治体で全高齢者が2カ月で接種を終えようとした場合、
週に6000回接種できる体制が必要と試算している。

問診後、ワクチン接種をし、製品名などが書かれたシールを「接種済み証」に貼る。
その後、重いアレルギー反応のアナフィラキシーショックなどの副反応が出ないか、15〜30分程度の経過観察を行う。

そうした対応に当たる医師や看護師ら医療従事者の確保も今後の課題だ。この日の訓練には、医師、看護師、事務員計24人がかかわった。

福田紀彦・川崎市長は訓練後、新型コロナの感染拡大で医療体制が逼迫しており、「医療人材は限られている」と強調した。
「医療従事者ではなくてもいいところをどれくらい切り分け、そこに人を手当てできるか」を見極めて行動すべきだという見方を示した。

現在、ワクチンはまだ国内にない。海外から国内に輸送し、市区町村が「基本型接種施設」と位置付ける拠点病院に運び込む。
さらに小規模な接種会場となる診療所などの「サテライト型接種施設」にワクチンを運ぶ。

ファイザーのワクチンは零下75度前後に保つ必要がある。ドライアイス入りの特別な保冷箱で搬送するが、品質管理が重要となる。
必要な保管用の超低温冷凍庫1万台も調達はこれからだ。

また、1170回分が1セットになっていて、解凍後は5日以内に使い切らなければならない。

使用時、生理食塩液で希釈する必要もある。訓練後、政府の感染症対策分科会のメンバーでもある川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は
「今日は全くの練習。出てきた問題点をまとめて、よりよいものにしていく」と語った。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/82521