https://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/20210128/1050012835.html
崎陽軒 苦境で駅以外の販売強化

横浜市に本社がある「崎陽軒」は、新型コロナウイルスの影響で鉄道の利用者が減り、駅弁の売り上げが大幅に落ち込んでいることから、幹線道路沿いに相次いで出店するなど、駅以外での販売強化に乗り出しています。

明治41年に創業し、「シウマイ弁当」で有名な横浜の「崎陽軒」は、新型コロナウイルスの感染が広がる前は1日平均で4万2000個ほどの駅弁が売れていました。
しかし、感染拡大を受けた外出や移動の自粛で旅行や出張などの際に駅弁を買う人が激減し、前回の緊急事態宣言が出ていた去年の4月や5月には、前の年の同じ時期と比べて会社の売り上げがおよそ70%減ったということです。
このため、駅以外での販路の拡大を進めていて、去年9月以降、都内や神奈川県内の幹線道路沿いの空き店舗などを利用し、4つの店を相次いでオープンさせました。
また、巣ごもり需要に応えようと、これまでは大口での注文でしか受け付けていなかった宅配を、横浜市内など一部の地域では3000円以上購入すれば無料で宅配するサービスも始めています。

このほか、冷凍の駅弁も新たに開発してインターネットを通じて販売しているということです。

崎陽軒広報・マーケティング部の西村浩明課長は「依然として厳しい状況だが販路を広げた結果、売り上げは徐々に回復してきた。ピンチをチャンスと捉えてさらに販売を強化したい」と話していました。

【デパートで駅弁支援の催し】
新型コロナウイルスで大きな打撃を受けている駅弁業界を盛り上げようと、東京・新宿の京王百貨店では、今月20日までの14日間、全国から駅弁を集めた催しを開催しました。
京王百貨店では、昭和41年から毎年、この催しを開いていますが、56回目となった今回は、新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれたということです。
しかし、売り上げが落ち込む駅弁業界を支援したいという思いから、感染対策を進めて開催にこぎ着けたということです。

感染防止のため、会場を3つのフロアに分散させて、密を避けるようにしたほか、駅弁の事前予約も受け付けて、会場で並ばなくても買うことができるコーナーも設けました。
会場を訪れた80代の女性は「現地に行かずに駅弁を買うことができるので、昔に行った場所の駅弁を食べたいと思って来ました」と話していました。

京王百貨店食品・レストラン部の堀江英喜統括マネージャーは「駅弁業界の厳しい状況を目の当たりにしていたので、“がんばろう!駅弁”をテーマに、今回の大会を開きました。どのような対策を行えば開催できるのか模索してきましたが、無事、開催できてよかったと思います」と話していました。

【業者から悲鳴に近い声】
京王百貨店で開かれた駅弁の催しに参加した業者からは、新型コロナウイルスの影響で駅弁が売れなくなっている現状について悲鳴に近い声が聞かれました。
このうち、福島県いわき市の業者の鈴木泰弘社長は「東日本大震災の津波で被災しましたが、なんとか会社を再開させたあと、地元を活気づけようと駅弁事業を始めました。しかし、新型コロナウイルスの影響で駅弁は全く売れず、作った弁当がすべて戻ってくる日もあり、本当に大変な状況です」と話していました。
また、鹿児島県出水市の業者の松山幸右社長は「去年6月には前年の同じ時期と比べて売り上げが95%減るという、今まで経験したことがないほどの状態に陥り、会社はなくなってしまうと覚悟したほどでした」と話していました。

【専門家「新たな販路を増やして」】
駅弁業者でつくる団体「一般社団法人 日本鉄道構内営業中央会」の元事務局長で、駅弁文化に詳しい沼本忠次さんは「団体に所属する駅弁業者は全国で90社ほどあるが、そのうちの9割近くが中小企業だ。新型コロナウイルスの影響は1年近くにわたって続いていて、これほど長期にわたって苦しい状況に直面するのは業界としても初めての経験だ」と危機感を募らせています。
そのうえで「駅弁は、去年で誕生から135年となった歴史あるものだが、この歴史が消えてしまうおそれもあるのではないかと思うほどだ。駅の中から駅の外に出るなど新たな販路を増やしてこの苦境を乗り切ってほしい」と話していました。

01月28日 17時17分 NHK