「被告人を懲役1年4月に処する。この裁判確定の日から5年間、その刑の執行を猶予する」

1月21日、公選法違反(買収)罪に問われた河井案里参院議員(47)に有罪判決が言い渡された。

1カ月ぶりに法廷に現れた案里氏は前回より髪を短くしていたが、毛髪は痩せ、完璧主義の彼女らしからぬハネも寝癖みたいに目立ち、顔や体はむくんでいた。黒のパンツスーツに紫色のシャツを合わせ、左胸には紺の議員バッジが光る。

裁判長の正面に立つこと約2分間。背筋を伸ばして手を前に組み、主文を聞き終えると一礼する。その後は椅子に座り、広島県議4人に対する計160万円の現金供与を「買収」と認める裁判長の朗読が続くと、不満そうに首を左に傾げた。次第に両耳が赤らむ。自分の無罪の訴えが次々に否定されると、何度も片手を目元にやり、すすり泣きのような音が止まらなくなった。

逮捕直前の昨年6月、筆者の取材に鬱病や精神科への入院歴を明かしていた彼女は、「医師のサポート」を条件に10月27日に保釈。だが、その後も一切記者会見を開くことはなかった。

判決の日も発言の場は設けられなかったが、私に「裁判で勝てますよ」と断言した頃の勝気さは消えていた。

「克行氏は夫か、元夫か」

長い判決文の中に、気になる一文があった。「克行は(略)、本件当時は被告人の配偶者であった」。『週刊文春』は昨年末、「河井案里が克行元法相に離婚調停を申し立てた!?」という見出しで夫婦の危機を報じたが、やはり離婚したのか――。

閉廷後、記者団から「克行氏は夫か、元夫か」と問われた弁護人は「私は別れたとは聞いていない」と否定も肯定もしなかった。

私の手元には2001年4月20日に広島市内のホテルで開かれた結婚式の写真がある。新郎は克行氏、新婦は27歳の案里氏。司会は新郎の盟友、吉川貴盛元農相だ。その吉川氏も河井夫妻の事件で家宅捜索された鶏卵業者の内部資料から闇献金が露見し議員辞職、収賄罪で起訴された。

すでに永田町の関心事は、案里氏が議員辞職する時期に移っている。3月15日までに辞めれば、4月の補選は2つから3つに増える。自民党にとって、支持基盤が固い広島での補選は唯一、勝算が見込める。世耕弘成参院幹事長が判決後の会見で「保釈されているのに全く登院していない」と批判するなど、党内で辞職論が強まるのは、補選で一つでも勝ち、衆院選に向けて弾みをつけたいからだ。

案里氏は〈私は権力闘争のおもちゃ〉と、筆者へのメールに書いてきたことがあるが、その心境は今も変わっていないのかもしれない。

(常井 健一/週刊文春 2021年2月4日号)

2021年1月29日 6時0分 文春オンライン
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