宮城県の古刹・通大寺では、人間に「憑依」した死者を成仏させる「除霊」の儀式が今も行われている。
30人以上の霊に「憑依」された高村英さんと、その霊を成仏させた通大寺の金田諦應住職。
二人に取材を続けてきたノンフィクション作家の奥野修司氏が、高村さんの体験を聞く。

事前に彼女から、30代前後の男性で、防護服のような白い服を着て働いていたと聞かされていた金田住職は、「福島原発で働いている人?」と尋ねた。
「そこまで分かりませんが、訴えも激しくて苦しんでいます。大変そうです」

金田住職の声が聞こえてくる。高村さんは、意識を本堂に切り替えると、住職は彼女の体を乗っ取った男に話しかけていた。
「大丈夫か? 何が起きたんだ?」金田住職は男の背中をさすりながら尋ねる。
「仕事をしている時に、急に……」「地震で何かが倒れたのか?」すると男は首を横に振った。

男 「地震じゃない、こんなのは聞かされてなかった。みんなで仕事をしていたんだ……。苦しい、なんとかしてくれ」
金田住職 「どこで働いていたんだ? 何が見える?」 男「白い……」金田住職 「白い? 防護服だな?」 

防護服と聞いた途端に、朦朧としていた男の意識がいきなり明瞭になったようで、それまでとは違った声音で叫んだ。
男は、少しずつ意識が戻ってきたようだ。

男「分からない、分からない……。ここはどこだ?ああ、吐いても、吐いても苦しい。体が、重い。いつまで続くんだ!
何が起きたか分からない。聞いてばかりではなく俺に教えてくれ! ここは病院じゃないのかよ!?」
金田住職「ここはお寺だよ」 男「お寺? なんでお寺なんだ。頼む、病院に連れってくれ! 苦しい」

金田住職「それはできない。あなたはもう死んでいるのだから……」男「……死んだ?」
金田住職「そうだ。あなたは死んでいるんだ。思い出しなさい」男「あの時か……、あの時、死んだのか?」
金田住職 「そうだと思う」 男「あいつはどうなるんだ」

高村さんの魂は建物の中を見ていた。そこは病院ではなかった。一時的に設えた避難所かもしれない。
テントからここへ運ばれてきたのだろう。建物の内部はシンプルで、それまでは倉庫に使っていたような雰囲気だった。

このやり取りは2012年11月のことだ。男が死んだのはその前年だから、それから1年以上も時が経っていたことを知らなかったのだろう。
金田住職「ちゃんと行くところに行かないと子供も守れないぞ。子供はみんなで守っていく」

男「いや、俺が育ててやりたい」と言いながら男は嗚咽をこぼす。
金田住職 「それは無理だ」 男「俺の子供なのに、どうしてなんだ」こんな押し問答がしばらく続いていた。

それを聞いていた高村さんは、表現やイントネーションから「標準語で喋っていましたが、明らかに西寄りの言葉でした。
関西弁ほどではなく、たぶん愛知か静岡あたりから出稼ぎに来ていたのかもしれません。
死ぬって分かっていたらこんなところに来なかった、みたいなことも言ってました」と言う。

金田住職「仕事中に倒れたのか?」 
男「具合が悪くて……多分、運ばれた。まだ余震が続いていた……。頼む、俺を大きな病院に連れて行ってくれ、お願いだ」

金田住職 「無理だ。あなたは、もう亡くなったんだ」
男「俺を生き返らせてくれ! 子供が生まれるんだ。俺の子なんだ。俺が抱くんだ」嗚咽をこらえながら訴える。

金田住職「死んだ人が行くところがあるから、あなたもそこに行きなさい」男「このままじゃ嫌だ。頼むから生き返らせてくれ!」
金田住職「それは無理だ。生き返らせることはできない」「あなたには行くべきところがある。そこへ行きなさい」

金田住職の読経が響き始めると、傍にいた住職夫人はそっと男の手をとった。男は、自分の妻の手だと思ったのだろう。
住職も不憫に思ったのだろう、金田住職「男の子が良かったのか、女の子か?」と尋ねる。

男「どっちでも良い。元気に生まれて来るならどっちでも良いんだ。俺は、俺はどっちが生まれて来るのか、楽しみにしてたんだ」
「立ち会ってやれずにすまなかったなあ。お前たちを守ってやれんで、本当に悪かった。心細かっただろうなぁ」と染み入るようにつぶやいた。 

住職夫人は「大丈夫だよ」と、優しく声をかける。住職夫人が霊の妻役を演じるのは今回が初めてだった。
「大事な子供を地震で死なせないでくれよ」と、再び男は「妻」に言い残すと、その場はしんと静まった

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