2021年2月6日 13時12分
 看護師国家試験を14日に控える愛知県内の男性(30)から「新型コロナウイルス感染者を救済する追試験がないのはおかしい」との疑問が本紙に寄せられた。看護師や医師、歯科医師など、厚生労働省が所管する22の医療関係職種の国家試験は1月末に始まり、3月中旬まで順次行われるが、いずれも追試はない。その理由を探った。(青木孝行)



◆資格が取れないと奨学金の返済が…

 男性は、就職予定の病院から3年間で300万円超の奨学金を受けて、3年制の専門学校で学んでいる。新型コロナ感染防止のため飲食店と塾講師のアルバイトを辞め、社会人時代の貯金を切り崩す生活。試験を前に、万が一感染したらと不安が募る。「国家資格が取れなければ正看護師として働けず、返済に困る」と訴える。
 厚労省医事課によると、新型コロナに罹患し療養中の人は受験できない。濃厚接触者については昨年12月、文部科学省の大学入学共通テストの対応を踏まえ、別室での受験ができるようにした。だが、共通テストとは異なり、追試験などの救済措置は設けなかった。



◆7年前の豪雪時は追試行われたが…

 過去には大雪の影響で追試を行った事例がある。2014年2月、看護師試験の日の大雪のため、一部会場で約1カ月後、追試が行われた。本試験で使われなかった問題案から急きょ問題を作成した。
 なぜ、コロナ禍の今回は追試ができないのか。
 医事課によると、新型コロナの感染予防で受験生同士の間隔を1メートル以上空けるなどの措置を取るため、例年よりも多く、試験会場となる施設が必要になった。昨年同様、6万人以上の受験が見込まれる看護師試験の会場は昨年は32だったのに対し、今回は2.5倍以上の86に上る。
 使用を打診した大学や民間企業からは「大学に通う学生が入れないのに、看護師試験のために開けるのは不公平」「感染症対策で外部には貸し出せない」といった理由で断られ、会場探しは難航したという。



◆会場確保が難しい…罹患受験生の不利益見極めてから考える

 医事課の担当者は「当日受験できない数が把握できない上、追試会場の確保も難しい」と打ち明ける。その上で「罹患した受験生にどんな不利益があったか見極めて、対応を考える」とした。
 男性によると、専門学校の他の学生からも「試験とコロナ感染への不安という二重のストレスがある」「内定取り消しが怖い」などの声が上がっているという。男性は「救急医療の現場で人命を救いたいと看護師への転身を決意した。1年先延ばしになるなんて想像できない」と話し、追試による救済を強く求めている。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/84439