2021/02/08 05:00
 日本画の巨匠、平山郁夫や東山魁夷かいいらの絵画を基にした版画の偽作が、約8年前から国内で大量に流通していることが業界団体「日本現代版画商協同組合」(日版商)などへの取材でわかった。大阪府の画商が日版商に偽作の販売を認めた。これまでに10作品の偽作が確認されたが、画商からの依頼で制作したとする関西の工房経営者は取材に「約40作品を各20枚ほど刷った」と話しており、流通量は約800枚に上る可能性がある。警視庁は著作権法違反容疑で関係先を捜索し、捜査を始めた。

 一部の百貨店は販売した版画の買い戻しを進め、影響が広がっている。美術商の全国組織「全国美術商連合会」(全美連)の浅木正勝会長は「大きな問題で、業界としてしっかり対応する」と話している。

日版商関係者によると、偽作が確認された10作品は、平山郁夫(1930〜2009年)が砂漠を歩くラクダを描いた「流沙朝陽」や、東山魁夷(1908〜99年)の風景画「草青む」、同じく日本画家の片岡球子(1905〜2008年)の「桜咲く富士」など。

 版画は、原画より安価に購入できることから人気が高い。原画を基に職人が制作する複製版画のほか、画家が版画用に下絵を描くオリジナル版画がある。それぞれ画家本人や遺族らのサインや印を入れ、枚数を制限して販売するのが一般的だ。余白の部分には通し番号が書き入れられる。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210207-OYT1T50201/