2日、緊急事態宣言の延長について記者会見する菅首相。右は新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長=首相官邸
 新型コロナウイルスのワクチン争奪戦が世界で続く中、「先進国クラブ」と呼ばれる経済協力開発機構(OECD)加盟国37カ国のうち、接種が始まっていないのは日本を含む5カ国にとどまっている。
菅義偉首相は「慎重にいろいろな治験なりを行った上で踏み切る」と釈明。2月中旬に承認を控える日本は供給不足の懸念も高まり、国際競争力の弱さが指摘される。

 途上国にも無償で供給する国際枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、低所得国へのワクチン供与の動きが進んでいる。東京五輪開催を控える中、感染確認者数が40万人を超えた日本の遅れは際立ち、国際的な信用低下を招く恐れもありそうだ。国産ワクチン開発でも製薬会社がリスクのある巨額投資に二の足を踏み、後れを取ったのが実情だ。

 他の4カ国は韓国、オーストラリア、ニュージーランド、コロンビア。うちオセアニア2カ国は感染抑え込みに成功したと評価されており、国民の切迫感は強くない。感染拡大が深刻な欧米諸国は昨年12月以降、相次ぎ接種を開始。少なくとも1回接種を受けた人は米国で2700万人超、英国も1千万人を超えている。

 日本と状況が比較的似ているのは韓国だ。感染抑え込みに成功したとの過信で、ワクチン確保への危機感が薄く、政府の作業部会立ち上げが遅れた。
昨年12月の感染再拡大を受け、慌てて確保に走ったが、文在寅大統領は釈明に追われた。感染確認者は累計約8万人。日本と同様に今月中旬以降、医療従事者らへの接種が始まる予定だ。

 コロンビアは、製薬会社側による副反応への責任回避要求を拒否したことで交渉が遅れた。20日に開始予定だが、既に215万人以上の感染が確認されており、国民の不満は大きい。

 オーストラリアの感染確認者は約3万人。ニュージーランドは2千人余りにとどまっている。

 日本では米製薬大手ファイザーのワクチンについて、審査手続きを簡略化した「特例承認」を認める方向で、12日の厚生労働省専門部会で妥当と判断されれば厚労相が15日に正式承認する。(ソウル、シドニー、サンパウロ共同)

2021年2月 8日 09:57
記事提供:共同通信

http://nm.sanyo.oni.co.jp/sp/newspack/2021/02/post-590806.php