『FRIDAY』2021年2月5日号より

新型コロナで世界が混乱に陥るなか、昨年は主要国で唯一のプラス成長。いち早くコロナ禍を制圧した中国が世界経済を牽引(けんいん)する――。習近平国家主席をはじめ、多くの中国人が思い描くシナリオだが、そんなにうまくいくはずがない。
中国経済は爆弾を抱えているが、コロナ対策で一時的に覆い隠されていた。それが徐々に露になってきた。法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が解説する。 「国有企業でも有利子負債が重荷になっており、企業が連鎖破綻を起こすのではないかと見られています。昨年12月には、半導体大手の『紫光集団』が社債の利息を支払えないとして、2度目のデフォルト(債務不履行)を起こしました。紫光集団は、習主席が卒業した清華大学が母体のハイテク企業グループ。すぐに経営破綻するわけではありませんが、国有企業がデフォルトに陥れば、他の関連企業へも深刻な悪影響を及ぼします」 有名企業の破綻はまだ報じられていないが、中国国内ではすでに失業が深刻な問題になっている。ジャーナリストの福島香織氏がこう指摘する。 「中国の国家統計局が発表するデータによると、昨年の平均『失業率』は5.6%程度に留まっています。しかし、中国の失業率は『都市部調査失業率』といって、都市部に戸籍を持つ人だけを対象にしたもの。かなり偏った統計と言えるでしょう。 本当の失業率はどれほどなのか。注目されているのが、北京大学国家発展研究院の姚洋(ヤオヤン)教授が独自に調査した結果です。姚教授は中国メディアに答える形で、『農村部での失業者を含めれば、失業率は20%』と発言しています。この推計が正しいならば、中国の就労人口はおよそ7億人なので、そのうち1億4000万人が失業したことになります」 国際投資アナリストの大原浩氏も地方経済の不振を危惧する。 「地方政府は莫大な量の債券を発行し、地元経済を支えました。しかし、実際には有望なビジネスがなく、設備投資が進んでいない。債券市場で調達された資金の多くは、債務の借り換えに充(あ)てられたと言われています。その結果、地方政府の財政が圧迫されていく」 もちろん、中国政府も自国経済の危うさは十分に認識している。それでも「経済の成長は続く」という幻想を国民に抱かせるために、公共投資を続けざるを得ない。日本国際問題研究所客員研究員で現代中国研究家の津上俊哉氏が言う。 「中国政府は景気が減速すると、インフラ投資などで需要を創出してきました。かつての日本でもほとんど車が走らない道路を整備するなど、無駄な公共事業を行ってきましたが、同じ状況が中国でも起きている。収益や経済効果を生まない公共事業が積み上がって、経済の効率を損ねています。ただ、公共事業をやらないと成長率が落ちてしまう。結果として巨額の政府債務が積み上がり、中長期的には中国経済は劣化していくでしょう」 こうしたなか、昨年11月に予定されていた、中国最大のスマホ決済サービス「アリペイ」を運営する「アント・グループ」の新規上場が延期に追い込まれた。同社を傘下に持つ「アリババ集団」の創業者、ジャック・マー氏が金融政策を批判したことに対して国が制裁を加えたのだ。 マー氏は3ヵ月姿を消した後、1月20日にビデオ演説を公開したが、二度と政府批判を口にすることはないだろう。批判的な言動を封じたところで、中国の経済危機が去ることはないのだが。

FRIDAYデジタル
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