朝日新聞は、2020年9月中間連結決算で419億円の赤字を計上した。主な原因は、新型コロナによる広告収入の激減と報じられた。

その責任を取る形で4月1日付で、渡辺雅隆社長(61)が退任。
先日、その後任に中村史郎副社長(57)が昇格することが発表された。新体制となる朝日新聞は、果たして苦境から脱することができるのか。

「巨額の赤字は、コロナだけが原因ではないでしょう」 と語るのは、元朝日新聞の販売管理部長の畑尾一知氏。
同氏は2018年に、『新聞社崩壊』を出版している。

「赤字に転落したのは、ここ数年の放漫経営のツケがまわってきたからです。
本業をおろそかにして、場当たり的な新規事業を次々に展開しています。誰がみても成功するとは思えない事業ばかりです。
たとえば『朝日自分史』一般の方の自分史を、記者経験者が取材をして編集、本にまとめるというものですが、利益は出ていません。

それから、販売店の配達ネットワークを利用してデリバリーサービスを4年前に始めましたが、昨年やめています」
「社内でアイデアを募って、小さな事業を次々と展開したわけですが、どれも成功していません。事業展開のためのビジョンがないんですよ。
色々事業をやれば利益が生じるのではないか、という安易な発想なので、うまくいくはずがありません」(同)

日本ABC協会によると、朝日新聞の発行部数は、2015年度は700万部近くあったが、18年度に600万部を割り込み、
20年上半期では516万部まで落ち込んでいる
20年8月には499万部になり、55年ぶりに500万部を割り込んだ。

読者に配達されないまま廃棄される「押し紙」を差し引くと、実売部数は350万部以下とも言われている。
「朝日は、最も多いときの発行部数は850〜860万部でしたから、今は半分近くまで落ちたことになります。今後もさらに減るとみています」(同)

■高齢者も新聞離れ

「2025年は、もっと厳しい数字になると思います。若者の新聞離れが言われて久しいが、最近は高齢者も新聞を読まず、
ネットを見るようになりました。部数低減に歯止めがかかりません」(同)

 実際、高齢者のインターネット利用率は、2018年から19年にかけて急速に上がっている。
60〜69歳は77%から91%に、70歳〜79歳で51%から74%に、80歳以上でも22%から58%に増えている。
「記者は朝駆け、夜回りでなどでタクシーを乗り回すなど、かなりのお金を使っていますが、もうそんな経費は使えなくなるでしょう」(同)

・日経新聞は、朝日新聞の半分程度の部数(213万部)なのに、連結売上高は朝日新聞の3536億円(2019年度)より多い3568億円(同)だ。

「日経新聞は、経済に特化していますから企業からの広告収入が多いのです。すでに、デジタルに舵を切っていて、
多くのビジネスマンに読まれています。

ところが朝日は一般紙なので、コンテンツが弱い。デジタルもうまくいっていません。

・毎日新聞は先日、資本金を41億5000万円から1億円に減資して中小企業になると発表しました。
中小企業になれば、税法上メリットがあるからです。朝日新聞も他人事ではないと思います」(同)

朝日新聞は、自社の優位性を生かした独自の大掛かりな構造改革を行う必要があるという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/390dc03e18eb266f124307afd694ae1d93479895?page=1
https://news.yahoo.co.jp/articles/390dc03e18eb266f124307afd694ae1d93479895?page=2