三菱自動車は、3月いっぱいでi-MiEVの生産を中止すると発表した。

 「まだ作っていたんですね!」と驚いた人もいると思うけれど、細々ながらラインを稼働させていたそうな。

 考えてみたら三菱自動車は2008年、世界に先駆けてリチウムイオン電池を採用した電気自動車の量産を開始。続いてアウトランダーPHEVも2013年に市販した。

 当時、世界最先端の電気自動車技術を持つメーカーだったと言って間違いなし。なにしろ世界中の自動車メーカーがi-MiEVを購入し、テストや評価を行ったほど。

 素晴らしいスタートダッシュを決めたのに、どうして今や飲み込まれ、集団のテールエンダーにいるのだろうか? 三菱自動車の電気自動車の状況について考察してみたい。

文/国沢光宏 写真/MITSUBISHI、編集部


■世界最先端だったi-MiEVやアウトランダーPHEVの実力

○2021年3月に生産終了の三菱i-MiEV (全長3480mm×全幅1475 mm×全高1610mm)

 当時、プリウスなどに使われているニッケル水素電池ですら、安定した品質の電池を作れるメーカーといえば日本の企業に限られていた。

 さらに難しい自動車用のリチウムイオン電池で先頭を走っていたのは、GSユアサと日産、サンヨー。
そのなかで最初に実用化したのが三菱自動車と組んでいたGSユアサという状況。2008年に先行公道試験を始めている。

 私も2008年6月に東京から洞爺湖まで電気自動車で行くという日本EVクラブ主催の「CO2削減 EV洞爺湖キャラバン」のドライバーとして参加したのだけれど、快適さと100km走る分のエネルギーを入れても1gたりとも重くならない電気という新しいクルマのパワーユニットに驚いた。i-MiEV、凄かったです。


○2012年12月に発表され、2013年1月に発売開始したアウトランダーPHEV

 さらに素晴らしかったのがi-MiEV用に開発したリチウムイオン電池を使ったアウトランダーPHEV。

 価格を含めた商品力の高さときたら、これまた世界最先端といってよい。未だにPHVとしての性能は高いですから。
じゃなんで集団の最後尾になってしまったのか? こらもう簡単。まったく進化していないからに他ならない。

●三菱の優れた電動車は出るのが早すぎた!?

 前述のとおりi-MiEVについていえば2008年からまったく変わらないまま2021年まで作り続けている。

 一方、電気自動車技術は日進月歩。開発速度で負け始めていると言われている日産ですら、
2010年に発売したリーフと最新のリーフは、同じスペースに容量62kWhの電池を搭載している(初期型は24kWh)。逆に考えたら13年間放置したワケ。

○2018年改良モデル・アウトランダーPHEV(全長4695mm×全幅 1800mm×全高1680mm)

 アウトランダーで量産したPHEVも、先日エクリプスクロスにモデル追加したものの、基本コンポーネンツは小改良されただけで2013年から8年間使い付けている。

 前述のとおり「毎日進み、1か月経つと1歩先に行く」という状況の電気自動車開発競争のなか、
追いつかれ、抜かれ、リードを奪われるのは当たり前だと思う。開発が遅滞した理由の1つは「早すぎた」こと。

 2008年当時、COP3(地球温暖化防止のための京都議定書)で、二酸化炭素の排出量削減は決まっていたものの、
日本も世界もドラスティックな変革をする動きになっておらず。日本の場合、二酸化炭素排出量を6%削減すべしと決められたが、その程度ならハイブリッド車の導入で実現できる数値。電気自動車のニーズ少ない。

 軽自動車として考えたら単純に高くて航続距離が短く不便。ということから売れなかったワケです。売れなければ量産効果もなく、モデルチェンジするコストすら出なくなる。

 折しも三菱自動車は不祥事を連発し、アウトランダーPHEVもデビュー直後に電池トラブルを出し生産停止に追い込まれてしまう。そんな悪い流れを断ち切れなかった。

 経営陣にも電気自動車の開発を凍結することに対する危機感がまったくなかったのだろう。

(以下略、全文はソースにて)
https://carview.yahoo.co.jp/news/detail/1244418621bde82b49042e2ac34177c6851fd87b/