北陸新幹線建設工事に伴う発掘調査で、富山市の「小竹貝塚」から2009年から10年にかけて、縄文時代前期(約7000〜5500年前)としては全国最多の91体の人骨が発見された。加えて膨大な数の動物や魚類の骨なども出土し、現在でも県埋蔵文化財センター(富山市茶屋町)が大学や研究機関と協力し研究を続ける。その最新成果の一部を公表する特別展「BONE〈骨〉―貝塚で知る生命の証」が3月7日まで、同センターで開かれている。【青山郁子】

 発掘された「小竹人」は、平均身長が男性159センチ、女性148センチと他の縄文人とほぼ同じだったが、中には170センチを超える男性もいた。中期から晩期の人骨と比較すると四肢の骨が細く、縄文人としては華奢(きゃしゃ)で、男性は小顔傾向だった。

 また男性が女性よりも2倍多く埋葬され、抜歯や抱石葬など、主に男性にしか見られない風習や葬送も確認された。栄養状態は悪く、10代後半から20代で亡くなる人が多かったという。

 小竹貝塚発掘以前は、縄文前期のDNAデータはほとんどなかった。小竹人のDNA分析の結果、13体でミトコンドリアDNAのさまざまな系統(ハプログループ)を特定できた。その結果、北方系と南方系が混在。縄文中期以降のグループが既に存在するとともに、従来の縄文人南方起源説が成立しないことも分かった。

 一方で、下顎(したあご)が外側に緩く弓状にカーブしている個体が約11%で見られた。一般的に縄文人の下顎はほぼ直線的で、現代日本人にも見られるようなくぼみも見られるが、小竹人はそのくぼみもなかった。弓状カーブの形態は「ロッカージョー(揺り椅子状下顎骨)」と呼ばれ、現代のポリネシア諸島の住民によく見られる。11%の高割合は小竹人のみだ。

 少なくとも縄文早期から人間と一緒に暮らしていた犬。小竹からは69匹の犬の骨が出土した。そのうち埋葬されていたのは16匹で、人の近くに仲良く埋葬された犬もいた。

 6割以上が、現代の柴(しば)犬とほぼ同じ体長36〜38センチの小型犬。狩猟によって強く咬耗(こうもう)したり損傷したりした歯は少なく、イノシシ猟などでの出番は少なかったと考えられる。

 また出土したイルカの骨からは、捕獲したイルカの胴体を分割し、ひれ周辺の部位を犬に餌として与えていたことも分かった。

 会場では人骨を含め約200点もの発掘品を展示し、縄文人の生活や環境を垣間見る。同センターの河西健二所長は「コロナで休館が長く続き、現地で現物を見る大切さを痛感した。小竹貝塚の発掘は当時、8万袋にも及び、研究は今も続く。ぜひ現物を見てほしい」と話す。同展は入場無料。金曜休館。

毎日新聞 2021/2/22 11:46(最終更新 2/22 11:46) 1104文字
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