警察庁は22日、佐賀県警の杉内由美子本部長(51)が警察庁長官官房付に異動する人事(24日付)を発表した。警察庁は「体調不良による異動」としている。後任には警察庁長官官房付の松下徹氏(50)が24日付で就任する。杉内氏は、福岡県太宰府市で女性が暴行されて死亡した事件の対応を巡り、佐賀県議会などで批判を浴びていた。

 杉内氏は2019年8月、佐賀県警本部長に就任。暴行死事件はその2か月後に発生した。死亡した高畑瑠美さん(当時36歳)の家族は事件前、県警鳥栖署を何度も訪れ、高畑さんに対する傷害致死罪などで起訴された山本美幸被告(42)から高畑さんを引き離すよう求めた。山本被告らから金銭を要求された際の音声データも持参したが、県警は被害届を受理しなかった。

 杉内氏は昨年11月以降、定例記者会見や県議会定例会で一貫して県警の対応に不備はなかったと説明していた。県議会では、「多くの県民が不信感を抱いている」などの厳しい批判を浴びた。家族も反発し、県公安委員会に第三者による調査を求めていた。

 県警関係者によると、杉内氏は今月16日も防犯劇を演じた高校生に感謝状を贈るなどの公務をこなし、18日開会の県議会定例会にも出席した。一方で、最近は、周囲に疲れた表情を見せることもあったという。

 県警は「体調不良により、業務に支障があると認められた」と説明。体調不良の理由や最近の勤務状況については「個人のプライバシーで答えられない」としている。22日は有給休暇を取得したという。

 高畑さんの家族は「後任の本部長には真摯に対応してもらいたい」とのコメントを出した。
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