https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/022200087/
 科学者たちが古代のゲノム研究における従来の壁を打ち破り、史上最古のDNAの解析に成功した。
そして、氷河期の北米大陸にいたコロンビアマンモス(Mammuthus Columbi)やケナガマンモス(Mammuthus primigenius)の進化の謎を解き明かす新たな扉が開かれた。

これまでに配列を決定された最古のゲノムより倍近くも古い、100万年以上前のマンモスのDNAを解析した結果が2月17日付けで学術誌「Nature」に発表された。
マンモスのゲノム配列が決定されたのは初めてではないし、この研究によってマンモスを復活させられるようになるわけでもないが、
急速に発展している古代ゲノム研究の世界において、画期的な進展がもたらされたと言える。

今回のDNAは、マンモス研究における伝説的存在であるロシアの古生物学者、アンドレイ・シェルが1970年代初頭にシベリアで発見した3本のマンモスの大臼歯から採取されたものだ。
3本のうち最も新しい歯の年代は約50万年から80万年前で、古い方の2本は約100万年から120万年前と推定されている。
これまでに解析された最古のDNAは、カナダのユーコン準州で発見された70万年近く前の馬の化石のものとされていた。

「100万年という見えない壁を破ることで、新しい『時間の窓』が開かれたというか、進化的観点における新たな展望が開けたように思います」
と、論文の筆頭著者であるスウェーデン、ウプサラ大学の生命情報科学者、トム・ファン・デル・バーク氏は言う。
同氏はこの研究を行っていた当時、ストックホルムにある古遺伝学センターに所属していた。

今回の発見によって、マンモスの進化に関する科学的知見に驚くべき事実が加わった。
まず、この古代のDNAは、北米の主要なマンモス種の一つであるコロンビアマンモスが、40万年から50万年前に交雑により誕生した種であることを強く示唆している。
古い方のDNAの系統は、この交雑が起きるかなり前から存在していたことがわかったのだ。
「脊椎動物のような高次の生物で、種の起源よりも古いサンプルが調査された例は他にないと思います」と、共著者である古遺伝学センターの遺伝学者、ロベ・ダレン氏は言う。

DNAをさかのぼればさかのぼるほど、科学者たちは進化の仕組みについてより良く知ることができる。
この研究の成功はまた、条件が完璧に整ってさえいれば、ひょっとすると数百万年単位で、進化の過去をより深く覗き見られる可能性を示唆していると、
著者らは述べている(それ以上古くなると、おそらくDNAは再構築するには小さすぎるほどバラバラに壊れてしまう)。
※略

■従来説を覆す驚きの配列
この最新の研究はすでに、マンモスがどのように進化したのかという問いに新たな光を当てている。
研究者たちが驚いたのは、このDNAの配列が、かつて北米大陸を闊歩していた2大マンモス種のうちの1つである、コロンビアマンモスの誕生よりも古かったことだ。
これが、マンモスの進化についてこれまでにない洞察をもたらしている。

150万年前までに、ヨーロッパとアジアに生息したトロゴンテリーゾウ(ムカシマンモス)の近縁種が、現在はベーリング海峡に覆われている陸橋を渡って北米にやってきた。
彼らがコロンビアマンモスの祖先にあたる。
約10万年から20万年前までには、北米には少なくとも2種類のマンモスが生息していた。北のケナガマンモスと、メキシコにまで到達した南のコロンビアマンモスだ。
過去の遺伝学的研究からは、コロンビアマンモスとケナガマンモスが交雑していたこともわかっている。

古生物学者は長い間、マンモスの特徴的な上顎の臼歯を使って種を区別してきた。
従来、歯の化石からは、約150万年前以降に北米に生息していたマンモスは、コロンビアマンモスとされてきた。
しかし、化石研究からは連続性が示唆されてきたのに対し、今回の遺伝的研究では、そこに明確な変化があったことがわかったのだ。
※略

ファン・デル・バーク氏らがこの謎のマンモスのゲノムを、すでに配列が決定されていたコロンビアマンモスのDNAと比較したところ、驚くべき結論に達した。
コロンビアマンモスは、40万年から50万年前に、シベリア、北米、またはかつて両者を結んでいたベーリング陸橋のどこかで、
クレストフカのマンモスとシベリアのケナガマンモスが交配して生まれた種だったのだ。

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