身体障害者や性暴力の被害者、性能力に問題がある人、40代まで性経験がない人など、
さまざまな理由から他者と親密な関係が築けない人を助ける「セックス代理人療法」の需要がイスラエルで高まっているという。
一般的な心理療法と違うのは、代理人が患者と性行為に至る点だ。

患者、セラピスト、代理人の3者で行われるセックス代理人療法の内容と効果について、イスラエル紙「ハアレツ」が当事者らに取材した。

30代の独身女性のシールは本名を明かすことができない。セックス代理人療法では、患者に「代理人」の身元を知らせないことが重要なのだ。

シールは、人と親密な関係を築くことができない人たち、つまり「患者」のために代理パートナーを務める。
患者がカップルとしての親密な関係を築き、性交渉ができるように手助けをする。

そう、実際に彼女が患者とセックスするのだ。

「できるだけ、自分はその人の本当のパートナーなのだと思うようにしています」とシールは言う。

「その男性に障害があっても、40歳で誰ともキスをしたことがなくても同じです。
私はただ一緒にいて、相手の肩に頭を乗せるだけ。私も喜びを得るし、彼にとってはそれが重要なのです。
不快を感じたら伝えます。そうやって男性は親密になることを学ぶのです」

「自分らしくない役を演じる俳優のようなものですが、偽りではありません。患者と一緒にいる時の私の感情は本物です。
たとえば、相手が私の嫌がることをすれば嫌だと言いますが、大声を出したりはしません。相手に対する自分の役割を理解しているからです」

患者と会うのが楽しいときもあるという。

「ときどき、若い頃を思い出します。手をつなぐのにとてもドキドキしていた頃です。
患者にとってはそれも初めての経験だったりするんです。この年齢になるとそんなふうに感じなくなるのは不思議ですね」

この数ヵ月、イスラエルではセックス代理人療法の需要が高まり、シールが勤務するテルアビブのクリニックには依頼が殺到している。

「あらゆる人が押し寄せています」と語るのは、自身の名を冠したクリニックの院長を務めるロニット・アロニ(68)だ。

依頼が増えている理由は明白だ。コロナ禍で、人々が絶望の淵に追いやられているのだ。
「孤独に苦しむ人々がやってきます」と、イスラエルでのセックス代理人療法の草分けであるアロニは言う。
アロニらが行っている代理パートナー療法は、その特異な手法からしばしば倫理面で論争や批判を招く。
やっていることは売春と変わらないではないかと辛らつな非難を浴びせる人たちもいる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f3337e6de81d75a6999c4a4178cf6d5df8a51218