福井県警科学捜査研究所(科捜研)法医係の村橋将崇研究員(34)が、人の血液かどうかを判別する人血検査について高感度な検査法を開発し、共同研究した企業とともに特許を取得した。これまで困難だった性質が変化した人血の検出が可能となり、裁判での犯罪立証などへの貢献が期待される。

犯罪捜査では、現場に残された体液の種類を調べ、人のものかどうかやDNA型などを鑑定し、犯罪の立証につなげている。人血検査は、人間の血液に存在するタンパク質「ヒトヘモグロビン」の検出の有無で判別する。従来の人血検査では20年以上前の血痕や火事現場などで熱が加わったもの、高濃度の薬物が混入したものは検査が難しく、人血と証明できないことがあった。

 こうした長年の課題に「もどかしさを感じることがあった」という村橋研究員は、人血検査のキットを開発、販売していた企業と2015年から共同で研究。タンパク質解析や100種類ほどの薬品を試すなどし、人血の“証明”となるヒトヘモグロビン自体が劣化したり性質が変化したりすることが検出できなくなる原因だと突き止めた。

 新たな検査法では、変性したヒトヘモグロビンを元の状態に戻し、安定化させる前処理を行うことで検出につなげる。16年に特許を申請し、昨年12月17日に登録された。県警が特許を取得するのは初めて。特許権は福井県に譲渡されている。

 村橋研究員は15年に法科学技術学会で奨励賞を受け、昨秋には論文が学術誌に掲載された。他県警などでも新検査の本格運用が始まっているという。村橋研究員は「人血証明は裁判での重要な証拠の一つで、全国で積極的に活用してもらえるとうれしい。今後も高度化する犯罪に対応できるよう、貢献していきたい」と話している。
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