滋賀県野洲市が2月、市議らのタブレット端末購入費約550万円について、新型コロナウイルス対策の交付金で賄う補正予算案を定例議会に提案したところ、一部の市議から批判の声が出た。コロナ対策の目的に沿わない不適切な使用ではないかとの懸念のため。市議会は3月4日、市民生活に直結する事業を優先するよう求める付帯決議を可決した。

 タブレット端末の購入費は、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金充当事業に盛り込まれた。議会事務局によると、行政のペーパーレス化の一環として、市幹部にはすでにタブレット端末が配備されており、市議18人全員と議会事務局職員5人にも配ることにしたという。

 交付金の使い道として、内閣府は感染拡大の防止や雇用の維持などを挙げる。しかし、使い道が疑問視される事例も出ている。佐賀県では、コロナに絡んだ差別解消のための「佐賀誓いの鐘」(仮称)を県庁に設置する事業費を補正予算案に計上。県議側から疑問の声が相次ぎ、事業費が予算案からはずされた。

 議員提案された付帯決議はタブレット端末の購入費を念頭に、「事業の緊急性、優先順位を再考の上、市民生活に直結している事業から実行するよう配慮を求める」とする内容。

 提案理由で北村五十鈴議員は「全国的に目的外と判断されかねない例が相次いでいる。今回の購入費は交付金の対象になるのか」と疑問を呈した。その上で、「タブレット端末がなくても議員個々の行動様式の再認識で感染リスクを低減できる。交付金を充てることは市民感覚から大きくずれている」と訴えた。

 一方、岩井智恵子議員は「近隣自治体では議員がコロナに感染する事例が出ている。危機管理上、感染防止対策の観点からも必要だ」と反対討論した。

 決議は賛成9人、反対8人の賛成多数で可決された。ただ、補正予算案は可決され、タブレット端末を購入することが決まった。

 購入費の予算計上にかかわった遠藤総一郎・議会事務局次長は「資料をペーパーレス化することにより、職員が議員に資料を手渡す際の接触機会を極力減らすことができ、感染リスクの低減が図れる」と説明。「アフターコロナを含め、市議会が審議を停滞させることなく議会運営の効率化が図れる」としている。(菱山出)

朝日新聞 2021年3月12日 10時52分
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