文春オンライン 3/15(月) 6:12

 自殺願望を持っていた少女(19)を殺害しようとしたとして、警視庁捜査一課は3月6日、嘱託殺人未遂容疑で、東京都内の無職、須藤昭雄容疑者(46=同じ少女への加害目的誘拐罪で起訴)を再逮捕した。この一報に、誰の頭にもあの事件がよぎったに違いない。

「1月下旬、ツイッターで『自殺したい』と投稿した少女に、須藤が『手伝います』と返信したことが事件の始まりです。須藤は1月31日に足立区内の路上に少女を呼び出して、車に連れ込んだ。その後、睡眠薬を飲ませ、練炭を焚いた上で絞殺しようとしました。ところがそのタイミングで少女は無事目を覚まし、『帰りたい』などと抵抗。2月2日朝、交番に駆け込んだことで、警察もすぐに把握することができました。須藤は『自分も死ぬつもりだった』と供述していますが、どこまで本気か疑問です。ただ、事件の経緯からして、座間事件を彷彿とさせ、一時は緊張も走りました」(警視庁担当記者)

 座間市で2017年に9人の男女が犠牲になった連続殺人。白石隆浩死刑囚はツイッターで自殺願望の女性を募り、次々に殺害していった。事件の発覚は9人目の犠牲者が出てから。それ以前の8人の失踪に、当局は連続殺人の臭いを嗅ぎ取ることはできなかった。

「幸いにも、今回の少女は1人目の被害者だったようで、事件が広がる兆しはありません。ただ、彼女の生への渇望がなければ、須藤が犯行を重ね、更なる被害者が生まれた可能性もありました」(捜査関係者)

「第2の白石」が現れ始めた理由
 そう危機感を抱くのは無理もない。実は「第2の白石」と呼ぶべき者たちの犯行が芽吹き始めている。その土壌を準備したのは新型コロナウイルスだ。自殺者は昨年、11年ぶりに増加し、2万919人。高校生は過去最多となる。コロナ禍で他者との接触が減り、1人で問題を抱え込む若者が急増しているのだ。

「中でも、SNSは“自殺志願者”と“殺人鬼”を結びつけるサービスと化しています」(同前)

 ツイッターで「#自殺募集」と検索すると、〈誰か一緒に逝きますか?〉。幾つものアカウントから絶えることなく悲鳴が上がる。そんな呟きに〈むかえにいくよ。どこ?〉と白石死刑囚よろしく死神気取りの囁きを入れる者もいる。

「警察庁の委託でネット上の違法・有害情報を監視する『インターネット・ホットラインセンター』が把握した自殺を誘引するような投稿などは19年を通して2629件。ところが、昨年は上半期(1〜6月)だけで、3042件に上っているのです」(前出・警視庁担当記者)

 コロナ禍で急増する「第2の白石」。彼らが犯行に手を染めないことを祈るばかりだが……。

「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年3月18日号
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20210315-00043983-bunshun-soci