政府が16日、子供1人当たり5万円の給付金など困窮世帯への支援策をまとめたのは、新型コロナウイルス禍で立場が弱い人々の生活苦が強まっているからだ。特に女性の非正規労働者は1月の労働力調査で前年同月比68万人減と男性の3倍超も減少し、雇い止めが進んでいる。製造業を中心に景気が持ち直す中、低所得雇用の受け皿となってきた対面型サービス業の落ち込みが貧富の二極化に拍車をかけている。
 「今回の対策はこれまで必ずしも十分に手が届いていなかった方々に対し、きめ細かく対応するものだ」

 菅義偉(すが・よしひで)首相は16日の関係閣僚会議でこう強調した。

 総務省が公表した1月の労働力調査では、女性の非正規雇用者数は2カ月連続で減少。「失業予備軍」とされる休業者数も136万人と男性の1・3倍に上った。雇い止めに加え育児や介護で退職を余儀なくされるケースも目立っている。

 野村総合研究所の推計では、シフト回数がコロナ前の5割以下で休業手当も受け取れない「実質的失業」状態のパート・アルバイト女性は103万人に上る。

 足元では国内でもワクチン接種が始まり、中国など海外経済の回復に伴う輸出増の恩恵で自動車や半導体といった製造業では景気も徐々に持ち直している。ただ、外出自粛や営業時間の短縮要請で女性や非正規が多く働く外食や観光など対面型のサービス業は回復の兆しもない。当面は厳しい雇用環境が続くとみられ、与野党から新たな支援策を求める声が強まっていた。

 一方、政府はコロナ禍で3度の補正予算を編成し、低所得のひとり親世帯に対しても給付金をこれまで2回支給するなど、手をこまねいていたわけではない。

 野村総研の武田佳奈上級コンサルタントは、それでも支援が届かないと不満が出る背景として「政府の対策が必要な人に認知されていない」と指摘する。情報発信がハローワークなど公的窓口に偏り、多くの人が仕事探しに使う会員制交流サイト(SNS)など民間情報媒体での発信が足りなかったためだ。この点は政府も認識しており、今回の支援策ではSNSを通じた広報活動の強化を掲げた。

 政府は、今後詳細を詰める中小企業の資金繰り支援策と併せ、コロナ禍からの回復が遅れる非製造業と、そこで働く女性や非正規を支えたい構え。家計や企業の資金需要が高まる年度末だけに時間は少なく、迅速な対策が求められている。(永田岳彦)

https://news.yahoo.co.jp/articles/99b8196be2fe0c1009d513ef206435d184cd2676
3/16(火) 19:51配信