【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、少なくとも2023年末までゼロ金利政策を維持する方針を表明した。同時に新型コロナウイルス危機から景気は大きく持ち直すとし、21年中に物価上昇率が目標の2%を突破すると予測した。FRBは景気回復後も長期緩和を維持する構えで、市場の早期の利上げ観測に対抗する。

16〜17日のFOMCではゼロ金利政策の維持を決め、短期金利の指標であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を、0〜0.25%のまま据え置いた。量的緩和政策も継続し、当面は米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)も同400億ドルのペースで買い入れる。パウエル議長ら投票メンバー11人の全会一致で決めた。

会合後に記者会見したパウエル議長は「景気回復は想定よりも早い。ワクチンと財政出動で進展があったためだ」と指摘した。ただ「雇用者数は危機前に比べて950万人も少ない水準だ」と述べ、長期の金融緩和を改めて強調した。年内に物価上昇率が2%を突破すると予測したものの「一時的なもので、政策目標の達成を意味するものではない」とも主張した。

今回の会合では、正副議長や地区連銀総裁ら18人がそれぞれ中期的な政策見通しも提示した。21年、22年、23年ともゼロ金利を維持する方針が中央値となり、FOMCの大勢は「ゼロ金利の解除は24年以降」となった。ただ、23年に利上げを見込む参加者は7人おり、前回、予測を提示した20年12月時点の5人から増えた。22年中の利上げを予想するメンバーも4人いる。

財政出動やワクチン普及で、景気は想定よりも早く回復すると予測した。FOMCは景気見通しを大幅に上方修正し、21年10〜12月期の国内総生産(GDP)が前年同期比で6.5%伸びると予測。物価上昇率も21年10〜12月期には前年同期比2.4%まで高まり、一時的に目標の2%を突破するとした。失業率は逆に4%台に下がると分析。物価と雇用の目標達成も想定よりも早まりつつある。

焦点は量的緩和の動向だ。FRBはゼロ金利の解除の前に量的緩和の縮小に着手する方針だ。金融市場では量的緩和の早期解除観測が浮かんでおり、米国債の需給悪化を見込んだ長期金利の上昇圧力も強まる。パウエル議長は「量的緩和の縮小はまだ議論していない」と強調したが、FOMC内には21年末から22年にかけての緩和縮小論が早くも浮上している。

新型コロナが深刻になって1年間、巨額の財政出動と大規模な金融緩和が市場を支えてきたが、政策の正常化の過程で投資家の動揺を招く可能性もある。

日本経済新聞 2021年3月18日 3:05 (2021年3月18日 7:23更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN17DZ70X10C21A3000000/