新型コロナウイルスの流行は1年を超え、大学ではオンライン授業が浸透している。21日に緊急事態宣言が全面解除され、来年度からキャンパスでの活動再開を表明する大学もあるが、学生とともに成長してきた大学周辺の学生街では、深刻な経営難に悩む店舗も少なくないようだ。

 例年、4月に入ると大学では学生団体による新入生勧誘期間が始まり、大学周辺の飲食店にとっても団体の予約が相次ぐ書き入れ時となる。

 慶応大の学生の多くが入学後に通う横浜市港北区の日吉キャンパス付近にも飲食店は多い。毎年学生団体の予約を受け付けていた飲食店店主は「キャンパス周辺に下宿する学生の来店は途切れないので、時短営業に伴う補償金と相まって経営は続けられている」というが、新歓期の団体予約は集まらず、「まとまった収入を見込める時期が見えない」とも漏らす。

 慶応大のテニスサークル幹部は「今年の新歓活動で飲食店を使用できる見通しは立っていない。せめて緊急事態宣言が解除されれば検討できるが、いまのところは昨年に続きオンラインの勧誘になりそうだ」。

明け方までマージャンに明け暮れる学生の姿も珍しくなかった雀荘はどうか。大阪府内の大学近くに構える雀荘店主は「コロナ対策を考えれば禁煙に切り替えるべきだが、常連から不評を買うかもしれない。繁華街では時短営業せずに深夜までにぎわう雀荘もあると聞くが、まねをするなら禁煙などの対策をしないと…」と吐露する。

 長年学生と寄り添った名物店も苦境を迎えている。2020年に創業70周年を迎えた東京都新宿区の喫茶店「ぷらんたん」は、昼のランチ営業から夜の宴会利用まで早稲田大の学生を支えた名物店だ。しかし大学ではオンライン講義が続き、学生団体の活動も大幅に制限されたため経営に大きな打撃を受けた。
同店の経営改善に立ち上がったのも早大生だった。店から相談を受けた早大生の有志団体がSNSアカウントを立ち上げ、今年1月末に1口500円から支援できるクラウドファンディングを募ったところ、開始から約1週間で目標金額の500万円に到達した。募集は今月15日まで行われ、目標金額を上回る約750万円の支援金が集まった。

 支援に応じた早大卒業生の男性は、「瞬く間に目標金額に届く様子には、大学関係者と店の絆を感じた。思い出が残る学生街を後輩に受け継ぎたい」と語った。

 慶大では創業84年を迎えた東京都港区の三田キャンパス内の学生食堂、「山食」が深刻な経営難に向き合っていた。学生の活動が制限され、20年の売り上げは前年比8割減。半年以内に運転資金が不足する見通しとなり、クラウドファンディングを立ち上げた。こちらも大学関係者が次々と支援に名乗りを上げ、目標金額の8倍以上の約4300万円が集まった。
今こそ学生・卒業生らが恩を返すタイミングかもしれない。

3/23(火) 16:56
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