<民主主義のあした>菅首相の記者会見、本紙は指名ゼロ 質問「選別」、最多6回の社も

 首相が自ら国民に向けて情報を発信し、報道機関が国民の「知る権利」に応えようと疑問点などをただす首相記者会見。菅義偉首相がこれまで官邸で行った9回の会見で、各社が何回質問できたかを本紙が集計したところ、6回からゼロと大きな差があることが分かった。本紙は一度も質問できていない。政府に批判的な社の質問回数が少ない傾向にあり、識者は「官邸によるメディア選別。結果的に国民に不利益を及ぼす」と警鐘を鳴らしている。(関口克己)

 会見は通常、首相の冒頭発言に続き、官邸の記者クラブ「内閣記者会」の幹事社2社(2カ月交代で持ち回り制)がそれぞれ代表質問。次いで挙手した記者から内閣広報官が指名する。
 菅政権が発足した昨年9月16日から、緊急事態宣言の解除を発表した今年3月18日までの9回の首相会見で、最も多く指名されたのは日本経済新聞とテレビ東京で各6回(テレビ東京は1〜2月の幹事社としての質問4回を含む)。

 5回質問できたのは7社で、このうち読売新聞、産経新聞、共同通信はすべて幹事社としてではなく、挙手して指名された。本紙は菅首相の就任以降、毎回官邸担当記者が挙手しているが、指名されていない。
 質問は1社1問に制限され、回答が不十分だったりしても再質問できない。
 本紙は小野日子ひかりこ内閣広報官に文書で、指名されない理由や、事前に質問内容を伝えないことと関係があるかを質問したが、「挙手の状況、内閣記者会とフリーランス等のバランスなどを勘案して指名している」とするだけで明確な回答はなかった。

東京新聞 2021年04月05日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/95818