菅首相は15〜18日の日程で訪米し、16日にバイデン米大統領と首脳会談を行う。バイデン大統領が迎える初の外国首脳だ。
政府は「米国が日本を極めて重要視している証し」(加藤官房長官)と胸を張るが、手放しで喜んでいる場合ではない。
東京五輪の開催を“人質”に取られ、米国から足元を見られて、ムリな要求を突き付けられかねないからだ。

■有名人の不自然な笑顔 聖火リレー“大本営報道”の気味悪さ

 日米首脳会談のメインテーマは「気候変動」だが、菅首相は東京五輪の開催支持も取り付けるつもりだ。
しかし、いくら開催を強調しても、国内の新型コロナウイルスの感染拡大を抑えられていない。

 ボロボロの感染状況での聖火リレー強行には、国際社会も冷ややかだ。
とうとう、国際水泳連盟(FINA)は、東京と福岡で開かれる予定だった五輪最終予選の3大会を中止にしてしまった。

 FINAは2日、飛び込み、アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)、オープンウオーター(マラソンスイミング)の3種目の最終予選中止を発表。
英BBC(電子版)によると、FINAは関係者への文書で、日本政府を「(競技の)公平さを担保するために必要な措置が講じられていない」と批判したという。
感染対策や費用負担で折り合いがつかなかったとみられている。

 感染拡大が続けば、他の競技でも中止論が広がる可能性がある。大会本番を迎えられるか、さらに暗雲が立ち込める。
そんなムードを払拭するためにも、菅首相はバイデン大統領から五輪支持の言質を何が何でも取り付けたいはずだ。

 しかし、そう簡単に思惑通りにいくのかは疑問である。

■中途半端な外交姿勢
 そもそも、バイデン大統領は五輪開催について「科学に基づくべき」と明言している。
そこで、いま懸念されているのは、バイデン大統領が日本の足元を見て過度な要求をしてくるのではないか、ということだ。

 対中強硬派のバイデン大統領は、中国による少数民族への人権侵害や、
台湾防衛のための安全保障、サプライチェーンの見直しを掲げ、対中政策の「踏み絵」を日本に迫ろうとしている。

 政権維持のために、どうしても五輪を開催したい菅首相は、バイデン大統領が「アメリカの選手団を派遣する!」と言ってくれれば万々歳だから、
それと引き換えに、米国の要求をのみかねない、とみられている。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。

「本来、日本は、中国になびいて欲しくない米国と強気に駆け引きできる立場のはず。
五輪開催を保証してもらうのは当然として、日米安保における日本の裁量権や、極東有事における米国の防衛義務についても交渉できるのです。
しかし、現状は米国に従わざるを得ず、中国の反発を受け止める覚悟もない。あまりにも中途半端です。
米国に強気に出られない以上、足元を見られて当然です」

 五輪ありきだから、コロナ対策も外交も中途半端なのである。最悪の首脳会談となりかねない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3f5d2f493716608b6d715e88fb2f7a8bbb08a5a0