フジテレビなどを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(HD)が、放送法の外資規制に一時違反していた。金光修社長は記者会見で、2014年に所管官庁の総務省に違反状態を口頭で報告し、厳重注意を受けたと説明。放送法上は、複数の放送局を傘下に置く放送持ち株会社としての認定取り消しにつながりかねない事態で、放送行政のずさんさが改めて浮き彫りとなった。

 金光社長は会見で「今から認定が取り消されたらおかしいと思うか」と聞かれ、「本音ではそう思う」と語った。総務省幹部は8日夜に取材に応じ、当時の担当者が報告を受けたことを認めた上で、「当時、違法状態は解消されており、認定取り消しは必要ないと判断した。その考えは今も同じだ」との認識を示した。
 総務省は3月、外資規制違反を理由に放送関連会社「東北新社」子会社の衛星放送事業の認定取り消しを決めた。ただ、東北新社側は17年8月に外資規制に抵触していることに気付き、総務省の担当者に相談したと主張。これに対し、当時の担当者は「報告を受けた記憶はない」と否定している。
 東北新社の場合は、外資比率の算出方法を誤解していたことが原因とされる。16年10月に認定を申請した時点で外資規制に抵触していたが、総務省は外資比率を有価証券報告書などで確認せず、認定後の外資比率の変動もチェックしていなかった。
 認定放送持ち株会社制度は、持ち株会社による放送事業のグループ経営を可能にするため、08年に導入されて民放キー局で導入が進んだ。
 仮にフジHDが放送持ち株会社としての認定を取り消されたとしても、子会社のフジテレビやニッポン放送、仙台放送などの放送免許には影響がないとみられる。ただ、複数の放送局を傘下に置くことができなくなり、資本関係を見直す必要が生じる。関係者は「影響は決して小さくない」と指摘している。

時事通信 2021年04月09日07時09分
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