※読売新聞

 多数のウサギを飼い、「ウサギ寺」として知られる新潟県佐渡市長谷の長谷寺が、飼育状況が過密で不衛生として、佐渡保健所から複数回の改善指導を受けている。これまで改善を支援してきた市民ボランティアが、住職との考え方の違いから撤退。今後、状況が再び悪化することも懸念されている。

 同寺は檀家だんかが約40軒と少なく、境内清掃の費用などが重くのしかかり、2006年頃から境内の除草のためにウサギを飼い始めた。この「草取りウサギ」にちなんだウサギ観音像が18年に作られ、話題となった。

 同寺によると、最も多い時には小屋で約50匹を飼育。佐渡保健所から昨年指導を受けた時点では30匹以上がいた。寺は指導後、ウサギが逃げ出さないよう小屋(約12平方メートル)を建て替え、ボランティアの支援を得て病気やけがの治療、雄の避妊、譲渡などに取り組み、小屋には現在、雌のみの11匹となった。放し飼いのウサギも多い時には約40匹いたが、今は数匹に減ったという。

 ボランティアが富田宝元住職(80)に対し、動物愛護管理法に違反する放し飼いをやめることや、県条例で届け出が不要な9匹以下への削減を説得したが、住職は「これ以上減らさない。草取りウサギは続ける」と譲らなかったという。

 ボランティアは「適正飼育への理解が得られない」として3月下旬に活動から撤退。ボランティアの近藤陽子・県動物愛護推進員は「保健所にお任せするしかなくなったが、寺から依頼があればいつでも協力したい」と話している。

 富田住職は取材に対し、寺の財政的な窮状を訴え、「このままではウサギがいなくなる。法令を守りながら数を増やしていきたい」との考えを示した。

2021/04/11 18:39
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210410-OYT1T50318/