ケリー特使訪中――アメリカ対中強硬の本気度と中国の反応 yahoo 遠藤誉 4/13
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20210413-00232579/

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 アメリカのケリー気候変動特使が14日に訪中するようだ。その真意はどこにあるのか?アメリカの対中強硬姿勢は本物なのか。中国の反応を含めて考察しようとしたところ、とんでもない結果が待っていた。

◆ケリー特使訪中に関する報道(略)

◆ケリーに関する中国での報道

 ケリーに関する中国での大きな報道の一つは、2月4日にさかのぼる。この日ケリーが大統領特使として、初めて中国に関して言及したからだ。

 ロイター電によれば、ケリーは以下のように述べているという。

 ――私は間もなく解振華(Xie ZhenHua)と会うでしょうが、彼は地球温暖化問題における中国の「リーダー」であり「強力な推進者」です。私は解振華とは20年ほど一緒に仕事をしてきたので、彼のことはよく知っています。彼は2007年から2018年まで、世界の気候変動交渉において中国代表団を率いていました。バイデンは、前任者であるドナルド・トランプが地球温暖化に取り組む国際的な気候協定であるパリ協定から米国を脱退させた後、米国を再びパリ協定に戻しました。

 2014年に米国と中国が気候変動問題で提携したことは、バイデンが副大統領だった2015年のパリ協定の仲介に極めて重要な役割を果たしたと思います。解振華氏は長い間リーダーであり続けました。私たちはお互いを知っており、これまでの互いの努力に互いが敬意を払っていると私は思っています。(以上、引用)

 このようにケリーは、今回会うことになっている解振華を褒めちぎっている。それも尋常ではない褒めようだ。

 それもそのはず。3月23日に中国とEUおよびカナダが主催するオンラインでの第5回気候行動に関する閣僚会議(Ministerial on Climate Action=MOCA)に、アメリカは久々に戻ってきて「参加させてください」という立場にあったからだ。

 解振華はこのオンライン会議でアメリカがパリ協定に戻ってくることを「歓迎する」と表明した。

 この一言が欲しかったからだと推測される。

◆ケリー特使の祖先は上海でリッチになったフォーブズ・ファミリー(略)

◆ケリー訪中に対する中国の反応

(略)
 要するに、中国側が米中の融和を求めてアメリカにすり寄ったという要素はほぼ皆無で、むしろアメリカが「本当に対中強硬姿勢を貫くつもりなのか」と第三者に疑念を抱かせる要素の方が多いのである。

◆「ケリー来るな!」が、やがて日本批判に

 もっとも、中国のネットでは最初の内は「ケリー、来るな!」だったのに、時間がたつにつれて「おい、ケリーよ!本気で環境問題を考えているのなら、まず日本に行け!原発処理水を海に垂れ流すなと日本に言え!」というのが増え始めた。

 「近隣諸国や国際社会に相談もなく、人類共通の海を日本が一方的に汚染させることは許さない!」といった対日批判が湧き出し始めたのだ。中央テレビ局CCTVには日本の福島県の漁業従事者たちの不満の声が「日本語」で流れるので、どの国のテレビを観ていたのかと混乱してしまうほどだ。 

 しかし、それは紛れもない「日本人の声」である。

 「何の相談もなかった」とか「きちんと説明してから実行に移して欲しい」あるいは「絶対に反対だ!」といった日本人の漁業関係者の声を、CCTVは「これでもか」とばかりに拡散させている。

 この時期に、こういう事態を惹起させるような動き方を日本政府にはしてほしくない。

 アメリカの本気度を分析しようと原稿に手を付けたが、蓋を開けてみれば、なんと、ケリー訪中にかこつけた日本批判が中国のネットに溢れているではないか。

 何とも不愉快な現実だ。

 東京オリンピック招致に当たり、安倍前首相は「福島はコントロール下にある」と高らかに英語で国際社会に宣言している。だとすれば同様に、「どのようにコントロールされているから、このような措置を採る」といった類の説明を、日本国民に対してだけでなく国際社会にも丁寧に発信してから決定の表明をすべきだったのではないだろうか。

 このようなことで日本が批判にさらされるのは不愉快でならない。日本にとって不利でもある。絶対に避けてほしかったと強く思う。