https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-04-16/2021041603_01_1.html

高橋 政府の中長期
ロードマップで「復興と廃炉の両立」を大原則に、汚染水対策は廃炉と一体としています。そして福島第1原発
の廃止措置は終了まで30〜40年としています。仮に海洋放出したら何年かかるのか。海洋放出は仕方ないと
か、海洋放出すれば目の前からタンクがたった数年でなくなると考える人も多い。でも40年、タンクはなく
ならないのです。  放出量では、福島第1原発の事故前のトリチウムの年間放出管理基準が22兆ベクレル
です。今たまっている総量が860兆ベクレルなので、単純計算で約40年分です。東電の文挟(ふばさみ)
誠一副社長に、現在のタンクがなくなるのに何年かかるかとただすと、福島第1原発の廃止措置に要する30〜
40年を使うと答弁しました。私は、そのくらい時間がかかるのだったら、急いで放出する必要はないと指摘し
ました。  しかも、放出するトリチウム濃度を1リットル当たり1500ベクレルの水準に下げるというの
が政府の方針です。この値は、原子炉建屋への汚染水の流入量の増大を抑えるとして設置された建屋周辺の井戸
(サブドレン)からくみ上げた地下水の放出を認めた時(2015年)の政治決着で決められたものです。仮に
容量約1千トンのタンク1基分の処理後の水を薄めるのに500基分の海水が必要なのです。  実際、
タンクを使うわけではないでしょうが、1基分だけで、今、敷地を埋めるタンク約1000基の半分に当たる量
の海水を使う計画です。500倍に薄めても500倍の量を放出したら同じことじゃないかと質問すると、梶山
弘志経済産業相は反論できませんでした。 ―政府・東電はタンクの設置場所が
足りない、22年秋ごろにはタンクが満杯になるから、放出はやむを得ないといっています。  高橋 
タンクの置き場が満杯になるからと、そこだけが強調されていますが、資源エネルギー庁や東電は国会で、炉心
溶融で溶け落ちた燃料デブリなどの一時保管施設や廃棄物の保管施設を建設するためのスペースが必要だという
のです。そのためのスペースを空けることが大きな理由です。でも、総量800トン程度といわれる燃料デブリ
は極めて高線量で、取り出しができるのかわかっていません。いったい取り出した後の置き場所などつくれるの
かと東電に聞くと、「具体的な検討はこれから」ということです。  結局、これまでの政府・東電の議論は
「放出ありき」で説得しようとして、漁業関係者をはじめ国民の納得を得られなかったということではない
でしょうか。トリチウムは国内外の原発からも放出されていると強調していますが、そもそもトリチウムの総量
規制がなく、原発ごとに基準が違うことや、「京」単位のトリチウムを放出する再処理工場には基準さえない
ことを指摘してきました。  事故を起こした原子炉を通った汚染水にはトリチウム以外に62種の放射性物
質があり、トリチウムの濃度や組成はタンクによって均一ではなく、通常の原発のものとは同一ではありません
。現在タンク約1000基の7割に未処理のまま残っているトリチウム以外の放射性物質は2次処理して基準を
下回るようにするといっています。以上のことから海洋に放出するのは「汚染水」ではないと政府は言い逃れし
ていますが、最後まで監視する必要があるのは言うまでもありません。 流さぬ立場で知見集めて  ―問題
の解決にはどうすればいいですか。  高橋 何より海に流さない立場に立って、科学的知見を集めて対応
することで、新たな道も決まると思います。40年の間にタンクも建て替えなくてはいけないこともあるでしょ
う。その際に大型のタンクにするとか。トリチウムの分離技術の開発なども時間をかけられます。  ―国会
では漁民の声を代弁していました。  高橋 2月に宮城県に近い新地町沖でクロソイという魚から国基準の
5倍のセシウムが見つかり、驚きました。事故から10年にもなるのに。福島県の漁師は原因を突き止めて
ほしいと言っています。被害の実態が正確に知られていないことがあるのではないでしょうか。  菅義偉
首相は、福島の復興なくして日本の復興なしといいます。私は国会で、漁師をしたいという息子のいる漁師の
言葉を伝え、「若い人たちが引き継いでいけなければ、復興なんてありえない。若い人に漁師を続けてもよいと
言えますか」と求めたのに、首相から答えは最後までありませんでした。船を出してこそ漁師です。賠償では
後継ぎはできません。政治の転換を強く思います。