https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82373?page=4

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中国が「潰したい」もの
小型原子炉で世界をリードしているのはアメリカだ。
米国のバイデン政権はパリ協定に復帰したが、2兆ドル(206兆円)を投じる気候変動対策には原子力発電所の活用、
特に小型原子炉の開発が盛り込まれている。
実は、日本もこの方向である。バイデン政権を見越して、米大統領選の直前の昨年10月26日、
菅政権はギリギリのタイミングで「2050年カーボンニュートラル」を打ち出した。
それを受けて、経済産業省は12月25日、カーボンニュートラルを実現するにあたって、
既存の原子力発電所の再稼働と並行し、新型原子炉の開発を推進するとした。
日米欧どこでも、再生エネルギーには50〜60%しか頼れない。残りの主力は原発と火力だ。
カーボンニュートラルのためには火力で生じるCO2を回収・貯留する必要がありコスト高にならざるを得ない。となると、やはり原発が必要だ。

といっても、従来の大型原発の再稼働も政治的に難しく、新設は事実上不可能に近いので、いずれ減らしていかざるを得ない。
その場合、カーボンニュートラルで、より安全な小型原子炉の開発が大きなカギを握るだろう。

この原子力は、安全保障とも密接に関わっている。
日米間で原子力協定があるが、日本は非核保有国で唯一再処理とウラン濃縮の権利を得ている。
特に再処理工場は一つでもあれば、油田一つに相当するエネルギー貢献があり、エネルギー自給率の向上に寄与する。
これを利用しない手はないが、それには、従来の巨大な原子炉ではなく、小型原子炉を活用すべきだ。

ところが、こうした話を潰そうとするのが、中国だ。

政府は、4月13日東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を決めた。中国は、日本の方針を強烈に批判し、
日本の原子力政策を変えようとしている。これこそまさに内政干渉だ。その中国に、韓国も同調し、日本を批判している。

処理水問題でわかる「中国とマスコミの距離感」
新聞各紙の社説は以下のとおりだ。
朝日新聞「処理水の放出 納得と信頼欠けたまま
https://www.asahi.com/articles/DA3S14869849.html
毎日新聞「原発処理水の海洋放出 福島の不信残したままだ
https://mainichi.jp/articles/20210414/ddm/005/070/104000c
読売新聞「処理水海洋放出 円滑な実施へ風評被害を防げ」
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210413-OYT1T50306/
日経新聞「処理水の海洋放出は地元の理解重視で」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD132J10T10C21A4000000/
産経新聞「処理水の海洋放出 「風評」に負けてはならぬ」
https://www.sankei.com/column/news/210411/clm2104110002-n1.html
東京新聞「原発汚染水 不安は水に流せない」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/97972?rct=editorial
これらを見ると、見事なほど、上に掲げた日米首脳共同声明に対する評価とそっくりだ。
読売、産経は評価し、朝日、毎日、東京は評価せず、日経はその中間だ。
それは、処理水の問題も、各紙と中国との距離感でその主張が自ずと決まるのだ。

この問題については、長い間検討されてきた経緯がある。その結果、昨年2月10日に資源エネルギー庁の小委員会が報告書をまとめて公表している。
この種の問題と常として、政府はこの報告書を各方面で説明している。その中には、各国の在京大使関係者も含まれている。
もちろん、原発国ではトリチウムを含む処理水を放出しているので文句を言えるはずなく、
「全体として、批判や抗議などはなかったという報告を受けている」と当時の菅官房長官は会見で述べた。

IAEA(国際原子力機関)も4月2日、この報告書に対しレビューを公表し、「科学的・技術的根拠に基づいている」、「技術的に実施可能」と日本の報告書を評価した。