変異株の感染が恐ろしいまでに拡大している。まん延防止どころか、すでに大きくまん延している。菅義偉首相は、バイデン大統領との会談に向う前、まだ「大きなうねりになっていない」と語ったが、どこを見ているのかと言いたい。

大阪でも、東京でも、まん延が始まってから防止措置を決めている。本来はまん延する前にやるから防止措置になるのである。大阪府をはじめ、兵庫県、和歌山県、奈良県などの近畿圏は、新規感染者数が過去最多となる日が頻出している。それでも菅首相は、様子を見るというのだ。

 緊急事態宣言の解除を真っ先に求めたのが大阪府の吉村洋文知事だった。だが結局、まん延防止等重点措置の適用を求め、それでも新規感染者が急増しているため、三度緊急事態宣言を求めるまでになっている。大阪の聖火リレーは、公道を使わず万博記念公園でやることになった。だが、ここまでして聖火リレーをしなければならないのか。私には、到底理解できない。

 東京都も18日連続で前週の同じ曜日を上回ったように、確実に感染者が増え、イギリス型の変異株がすでに半数を超えた。緊急事態宣言の解除が大阪より遅れた東京で大阪のような爆発的な感染拡大が起こる可能性は高い。小池百合子東京都知事も報道陣に対して、「緊急事態宣言の要請を視野に、スピード感を持って検討するよう指示した」と語っている。

 また4月18日、山形県と山形市が、県内の感染者2人から感染力が高いとされる変異ウイルス「N501Y」が検出されたと発表した。これによって全都道府県でイギリス型の変異ウイルス感染が確認されたことになる。

 もはや躊躇しているときではない。ある専門家は、「去年1年間の経験は役に立たないかもしれない。それほど変異株の威力はものすごい」と語っている。オリンピックや解散総選挙などをにらんで緊急事態宣言を出さないのだとすれば、それは国民の命をないがしろにするものである。緊急事態宣言の発令を強く求めたい。

■ パンデミック下で五輪を開くべきでない

 そもそも世界が新型コロナウイルスのパンデミックに襲われているときに、オリンピックはやるべきものなのか。東京オリンピック・パラリンピックは、本来は昨年(2020年)行う予定だった。それが新型コロナウイルスの感染拡大のため今年に延期された。

 確かに、昨年と違いワクチンが開発され、イギリスやイスラエルなどでは大きな効果を発揮しているようだ。だがそれはまだ世界の一部に過ぎない。開催国である日本は、まだワクチン接種がほとんど進んでいない。

 480万人の医療従事者への接種回数は、4月15日時点で約184万回にすぎない。2回接種が必要なので単純計算で92万人ということだ。まだ390万人の医療従事者への接種がなされていないのだ。先日、八王子市で高齢者への接種が行われたが、接種している医師がまだワクチンを打っていないという驚くべき事態が発生していた。その高齢者への接種回数は、4月15日現在、全国で6674回に過ぎない。3600万人の高齢者に対して7200万回打たなければならないのに、この少なさである。

 菅首相がわざわざ東京都八王子市役所の接種会場を視察したが、「高齢者への接種を始めました」というアピールでありアリバイ作りのようなものだ。だが、こんなに少ない数では高齢者への接種を始めたということにはならない。



 医療従事者は5月前半に終わらせる、高齢者は6月末までに終わらせる、というのが、政府の接種スケジュールだが、誰も信じてはいない。中途半端に高齢者に接種するより医療従事者を優先すべきだろう。私は73歳で、COPD(慢性閉塞性肺疾患)という基礎疾患を抱えているが、私などより医療従事者を優先してほしい。

 東京都医師会の尾ア治夫会長は、4月13日の緊急記者会見で、感染拡大の「第4波に入っている」と断言し、東京オリンピック・パラリンピックについて、開催の可否について「さらに厳しい状況」という認識を表明した。同時に「変異株が、これまで急速に拡大するとは予測できなかった。今の状況、ワクチンの接種とか、どんどん遅れてきている」と指摘、「万が一、急速な感染拡大があった場合にはワクチン接種も遅れるし、医療従事者も、そちらに専念せざるを得ない」と危機感をあらわにしている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/26fba5760a0f44651f5ebdaa075e2b61f0834d37
4/20(火) 11:31配信