※毎日新聞

新型コロナウイルスの新規感染者が急増しているインドで、医療用酸素の不足が深刻化している。地元メディアによると、首都ニューデリーの私立病院で23日夜、酸素の不足により、治療中の新型コロナの患者20人が死亡した。酸素だけでなく、病床の不足も問題になっており、医療体制は危機的状況に陥っている。

インドでは、医療水準が比較的高いとされる病院でも酸素の不足が深刻化している。また中部マディヤプラデシュ州では20日、新型コロナの患者の親族が病院の倉庫から酸素ボンベを奪う事態も起きた。

病床の不足も問題になっている。担架に乗せられて病院の前で列を作るコロナ感染者や、一つのベッドに複数の患者が横たわる様子などが報道されている。新たな入院患者の受け入れを停止した病院もある。

酸素や病床の不足の背景には患者の急増がある。インドでは2020年9月に1日の新規感染者が10万人に近づき、ピークを迎えた。これ以降は減少を続け、21年2月には1万人を下回る日もあった。

だが3月に入ってから感染が急速に拡大。4月22日のインド政府の発表では、1日の新規感染者が約31万5000人を記録し、1日の新規感染者としては世界最悪となった。同24日の発表では1日の新規感染者が34万6000人を超えた。

感染者急増の要因の一つとして指摘されているのが、一つのウイルス内で二つの変異が起こる「二重変異株」だ。強い感染力と、免疫をかいくぐる特徴を持つ可能性があるという。

また、3月中旬から始まったヒンズー教の大祭で大勢の人が集まったことや、地方選の大規模な選挙集会が行われたことなども感染拡大に拍車をかけている可能性がある。十分な対策をとらなかったとしてモディ政権を批判する声も出ている。

首都ニューデリーや、商都ムンバイがある西部マハラシュトラ州などでは外出禁止令を出しているが、感染拡大が収束に向かう兆しは見えない。【ニューデリー松井聡】

2021/4/25 07:51(最終更新 4/25 07:51)
https://mainichi.jp/articles/20210425/k00/00m/030/008000c