新型コロナの第2波に襲われているインドでは、5月中旬までに1日あたりの死者は1万2000人を超え、
8月までの死者は合計100万人に迫ると予測されている。

新型コロナに対する政治家たちの時期尚早な勝利宣言で対策が緩和されたうえ、
大量のワクチンを国内需要に回さずに輸出してきたことが被害を悪化させている。

記録的な速さで、安全かつ効果的な新型コロナウイルス感染症ワクチンが複数開発されている。
にもかかわらず、世界のワクチン製造大国であるインドが現在、このウイルスによって厳しい状況に置かれているのは残酷な皮肉だ。

インド政府による公式発表では、1日あたりの新規感染者数は38万人を超え、死者数は1日で3400人に上ると伝えられている。
この数字だけでも深刻だが、実際の被害はそれよりもさらに大きいと見られている。

インド中の医療システムが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第2波の圧力によって追い込まれており、
酸素、医療機器、医薬品、病床の深刻な不足によって状況がさらに悪化するおそれがある。

インドの強力なワクチン開発および生産計画は、低〜中所得国へのワクチン供給をこれまで支えてきたが、
国内ではワクチン接種の大規模な拡大に苦戦している。

同感染症のパンデミック発生から1年が経ち、国際的な連携の取り組みがいくつか実施されてきたが、
インドで起こっている危機によって際立った不平等の高まりを解消するには至っていない。

なぜこうなってしまったのか。事態のさらなる悪化を防ぐためには今何をすべきなのか。

危機にあっては、リーダーシップがとりわけ重要となる。昨年9月に新型コロナ感染の第1波がピークを過ぎると、
インド中の政治リーダーたちは現状に満足し、時期尚早に勝利宣言をして公衆衛生対策を緩和した。

ナレンドラ・モディ首相は今年1月に実施された世界経済フォーラムで、
インドは「新型コロナウイルスを効果的に抑え込むことで、人類を大災害から救いました」と述べた。

だが、ここ数週間で開かれた選挙集会や大規模な宗教集会といったイベントによって、大規模な感染拡大が引き起こされてしまった。

感染が増加する中で、ワクチン接種は第2波を緩和できるほどのペースでは実施されてこなかった。
インドのワクチン接種回数は1億5000万回で、世界で3番目に多い。

しかしながら、インドは膨大な人口を抱える国であり、少なくとも1回のワクチン接種を受けたインド国民はわずか9.1%。

ワクチン接種が完了した国民に至っては2%に過ぎない。
https://www.technologyreview.jp/s/242675/what-india-needs-to-get-through-its-covid-crisis/