緊急事態宣言の延長決定に伴い、東京都が独自に決めた12日以降の休業要請などの措置で、業種や施設によって明暗が分かれている。休業や無観客開催の要請が解かれる劇場やコンサートの関係者らは安堵(あんど)する一方、休業要請が続く映画館や美術館からは「線引き」への不満が漏れる。

 休業要請を受けてきた劇場や演芸場、無観客開催を求められていたイベントなどは、人数上限5千人かつ収容率50%、午後9時までといった要請に変わる。

 再開する東京芸術劇場の高萩宏副館長は「ずっと休館が続く状況は免れた。感染防止を徹底しながら、粛々とやっていくしかない」と気を引き締める。

 公演中止や収容率の制限が続き、舞台芸術の関係者も大きな打撃を受けてきた。「劇場での対策に加え、観客に直行直帰を呼びかけるなど、できる限りのことはしてきた。そうした取り組みも理解してもらえたのだと思う」

 ライブの主催者からなるコンサートプロモーターズ協会の今泉裕人事務局長は「依然として非常に苦しい状態は続いている」としつつ「安堵した。最悪の状況はまぬがれた」。平時よりも検温などで入場に時間をかけており「前回の緊急事態宣言のように午後8時までとなると厳しかった。1時間延びたのはとても大きい」と話した。

 一方、映画館や美術館は休業要請が維持される。

 映画館などで作る全国興行生活衛生同業組合連合会の佐々木伸一会長は、新型コロナ対応の特別措置法の中で同じ「劇場等」に区分されている施設の中で「なぜ映画館とプラネタリウムだけが休業しなければならないのか。他業種と比しても、バランスが取れておらず、全く理屈が通っていない」と憤る。

 「美術館は感染リスクも低いので開けたかった」と都内の美術館長は漏らす。「人の流れを抑えるためなら、劇場は営業できるのはちぐはくな感じがする。1回ごとの公演と、長期間の展覧会では業界の事情が違うということかもしれないが……」と戸惑う。(定塚遼、編集委員・藤谷浩二、石飛徳樹、大西若人)

朝日新聞 2021年5月8日 18時51分
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