新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が東京、大阪、兵庫、京都で5月31日まで延長され、12日から愛知、福岡にも新たに宣言が発出される。

 全国で5月8日時点で確認された感染者は7043人に上り、北海道、群馬、新潟、石川、愛知、滋賀、岡山、香川、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分の13道県では一日あたりの感染者が過去最多となった。

 東京や大阪では連日、新規感染者が1000人を超え、病床の逼迫、医療崩壊が問題となっている。

 そんな中、菅義偉首相の側近である和泉洋人首相補佐官が「肝いり」で用意したコロナ療養施設が宙に浮き、計48億円もの血税がパーになったことがAERAdot.の調べでわかった。

 コロナ療養施設は東京都内の4か所にあった警察用宿舎を昨年、37億円かけて改修し、軽症、無症状の感染患者を受け入れる施設として使うはずだったが完成後、一度も利用されないまま、長らく放置された。

 今年4月からもとの警察用宿舎に戻す11億円をかけた改修工事が再び始まり、5月末に完成するという。

 この施設はもともと東京五輪・パラリンピックで警備にあたる警察派遣部隊が宿舎するために昨年4月頃、建設されたもので、東京都江戸川区、江東区、大田区の4カ所にある。

 緊急事態宣言が延長され、休業要請などで休職者、失業者があふれる中でなぜ、こんなデタラメな税金の使い方がなされたのか。自民党関係者がこう語った。

「このコロナ療養施設は菅さんと和泉首相補佐官の負の遺産ですよ。当時、官房長官だった菅さんの意向を受け、名代として懐刀の和泉さんが動いた」

 警察庁などによると、これら4つの施設は昨年4月、官邸の方針でコロナ感染の軽症・無症状の患者らが療養する施設に使うことが決定。

 大部屋を個室にリフォームし、トイレや浴室を増やしたほか、駐在する医師や看護師のためのスペースを設けるなどし、改修費として約37億円が費やされた。この件に関わった厚生労働省関係者もこう証言する。

「この案件を誰が決めて、こういう結果を招いたかというと、官邸です。その一番、高い位置の人は首相と和泉首相補佐官です。和泉補佐官はこの案件の責任者だった。この件は『関係者協議会』で協議されましたが、その議長は和泉補佐官です」

 関係者協議会とは「新型コロナウィルス感染者(軽傷者、無症状者)の宿泊療養施設の整備・運営に関する関係者協議会」の略称だ。

 第一回の会合があったのは昨年4月10日。東京都千代田区霞が関の中央合同庁舎4号館11階の特別会議室で、「関係者協議会」が開かれた。

 出席者は議長である和泉補佐官、東京都副知事、内閣官房、国交省、厚労省、防衛省、警察庁、警視庁などの関係省庁の担当者たち。

 その後、関係省庁との打ち合わせで「実際に(医療施設の)運営に当たると想定しているのは、関東にあるA病院グループ。内諾は得ている」「運営主体はこうした医療法人を活用すべきである」などと和泉補佐官らが発言したという。

 さらには20年4月、A病院グループの責任者との打ち合わせの席上、「(厚労省の)B審議官から自衛隊の医官、看護官の派遣も検討している」などの発言もあったという。政府関係者がこう語る。

「A病院グループに4つの施設の運営をゆだねることになったら、国や東京都からのかなりの額の運営委託費が入ったはず。菅さんがA病院グループと付き合いがあり、和泉補佐官に推したと聞いています。だが、警察宿舎を改修してコロナ宿泊施設にするという彼の計画は、お粗末過ぎた。施設はプレハブでバス、トイレが共用です。酸素吸引のための配管設備などもない構造上の欠陥もあり、医師など専門家からリスクが高くて危険だという指摘がありました。東京都は当時、コロナ感染者を受け入れてくれるホテルを十分に確保しており、難色を示していた。しかし、A病院グループを紹介した菅さんの顔をつぶすわけにはいかず、和泉補佐官が突っ走ったんです」

 厚労省関係者も経緯をこう明かす。

「当初は臨時の医療施設にすることも考えていたので、東京都は直接運営できない。代わりに運営してもらえる医療機関はないか、といろんな方面にあたった結果、A病院グループが協力してもよいというご意向をお持ちだと打ち合わせで聞いたので、厚労省から東京都にその話を伝えた」
(以下ソースで)

アエラ.dot 2021.5.9 10:00
https://dot.asahi.com/dot/photoarticle/2021050800024.html?page=1