近藤大介 『週刊現代』 特別編集委員 



ワクチン接種の重要さを、もしもイスラエル並みに日本政府も日本国民も考えていたなら、
いまごろは晴れやかにオリンピックとパラリンピックの準備ができたのにと思う。

前述のデータによれば、イスラエルの接種率は121.23%で世界4位、OECD加盟37ヵ国ではトップである。
何度も書くが、日本は3.32%で世界135位、OECDではダントツのビリなのだ。

日本の危機意識のなさということで、いま一番気になるのが、感染爆発が起こり、恐ろしい変異株も指摘されているインドからの入国問題だ。

日本は昨年冬から春にかけて、感染爆発が起こっていた中国からの入国をズルズルと続け、水際対策が杜撰(ずさん)だったために、
第1波の到来を招いたと言っても過言ではない。それなのにいままた、インドに対して同じことをやっている。

現在でも日本航空が週に3便、全日空が週に2便、インドからの客を日本に運んでいるのだ。

多くの国々は、とっくにインドとの直行便をストップしている。
隣の韓国も直行便をストップし、政府がチャーター機を飛ばして、インド在住の韓国人たちを帰国させる措置を取った。

ところが日本が5月10日から始めたのは、インドからの入国者に対して、これまでは3日間だった「指定宿泊施設での待機(隔離)」を、6日間に延ばしただけだ。
中国では昨年から、世界中からの入国者に3週間の隔離生活を徹底している。

というわけで、長々と書いてきたが、現在の菅政権のもとでオリンピックとパラリンピックの開催するのは、あまりにリスクが高い。
加えて、世界に対しても無責任ではないかというのが結論である。


近藤大介 『週刊現代』 特別編集委員 
1965年生まれ、埼玉県出身。東京大学卒業、国際情報学修士。講談社『週刊現代』特別編集委員。明治大学国際日本学部講師(東アジア国際関係論)。
2009年から2012年まで、講談社(北京)文化有限公司副社長。近著に『アジア燃ゆ』(MdN新書)、『中国人は日本の何に魅かれているのか』(秀和システム)、
『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)など。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83010?page=8