感染症の制圧にはワクチン接種が効果的だ。ヨーロッパではロックダウンが効かない、と悲鳴が上がっている。
まして、まん延防止等重点措置はゆるすぎる。

やはり、切り札はコロナワクチンだろう。
しかし、日本のコロナワクチン接種率はOECD(経済協力開発機構)加盟国の最下位だ。大幅に遅れている。

なぜ、そうなってしまったのか。まず、第一はアメリカ政府がファイザー、モデルナ、ドイツ政府が
ビオンテック、イギリス政府がアストラゼネカなどのワクチン開発を強力に支援したのに、
日本政府は民間に任せきりだったこと。

アンジェス、第一三共、塩野義製薬などは好投したのに、打線の援護がなく敗戦投手になったようなものだ。

それと、日本には感染症薬の緊急承認の制度がなかったこと。これが第2の理由になる。

パンデミック(世界的な大流行)に対応するには集団免疫体制の構築が不可欠だ。
日本は流行の速度に薬価承認の作業がついていけなかった。海外は緊急承認を連発している。

第3の理由はコロナワクチンの獲得競争が繰り広げられる状況下、トップ外交の欠如だ。
外国首脳は直接、ファイザーなどの経営者に直談判したという。

菅首相がアメリカに行ったのは4月だ。それまでは厚生労働省の交渉相手は海外製薬会社の何の権限もない日本法人だったらしい。
有事の際はトップが動かなければ後れを取る。


杉村富生経済評論家
1949年熊本県生まれ。明治大学法学部卒業。軽妙な語り口と、分かりやすい経済・株価分析などに定評がある。
ラジオNIKKEI「ザ・マネー」にレギュラー出演。著書は「これから10年 株で『1億』つくる!」(すばる舎)、
「株長者が絶対にハズさない『売り』『買い』サインはこれだ!」(ビジネス社)など多数。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/288977