「今年1月の緊急事態宣言では休業の要請はなかったが、今回は人流を抑えるためとしてエンタメ施設が狙い撃ちされた。これまで我々がしてきた努力は一体なんだったのだろうか」。4月25日に東京と大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に発令された3度目の緊急事態宣言。それにより、対象地域内の映画館の多くが突然の休業を余儀なくされた。

MOVIE WALKER PRESSは、映画館を中心とした興行場の業界団体である全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)の佐々木伸一会長に話を聞きに行った。なお本稿は、ゴールデンウィークを控えた4月28日に行なった取材内容に加え、緊急事態宣言の延長や東京都独自の休業要請など、目まぐるしく状況が変化したことを受けて5月13日に行なった追加取材の内容を含んでいる。

■「映画館でのクラスターや感染事例は1件も報告がない」

佐々木会長は「社会生活に必要かどうかという、営業の基準の話もありますが、なにが必要でそうでないかは個人の思想によるものですから、それを行政に決められる筋合いはありません。行政に求めることは、各々の施設の感染リスクを評価し、きちんとした補償をしたうえで短期間に感染の拡大を抑えこむこと。社会に必要かどうかといったことで業種に差を与えることは理解に苦しみます」と苦言を呈する。

いまからおよそ70年前、大映の常務であった松山英夫によって名付けられたと言われる「ゴールデンウィーク」は、正月や夏休み以上に映画館が賑わいをみせる、映画興行における最大の書き入れ時として知られてきた。いまだ新型コロナウイルス収束の糸口が見えないなかで、大都市圏では昨年に続き、またしても「映画館が開いていないゴールデンウィーク」となった。

全国47都道府県の興行組合によって組織された全興連では、早い段階から新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための様々な取り組みを行なってきた。「まだコロナがどんなものかわからなかった昨年の5月に、ガイドラインの作成が必要となり、感染症専門医の方々と作成しました。その後も様々な実証実験を繰り返し、科学的知見の基づくデータを出したうえで、ポップコーンを食べる時にどの程度の飛沫が飛ぶのかなどのデータを出していきました」。


映画館の営業を認可する興行場法では、都道府県および自治体によって異なるが、1平方メートルあたり毎時75立方メートル以上の換気能力を有することなど、一定の空調設備の整備が義務付けられている。昨年夏には映画館内の空気の流れを可視化させる実証実験映像を公開するなど、映画館が感染リスクの低い安全な場所であることをアピール。「万が一クラスターや感染事例があった際には、全興連に報告がくるようになっていますが、いまのところ1件も報告はありません。それでも対策を緩めることなく徹底し続け、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室も映画館における対策を評価してくれていた。ただ『今回は人流を抑えるためなので協力してください』ということでした」。

■「横浜の映画館に人が多い。当たり前じゃないですか」
4月25日に発令された4都府県に対する緊急事態宣言では、床面積1000平方メートル超の大型商業施設が休業要請の対象となり、その要請に応じた施設には協力金として日額20万円の協力金が支給される。しかしその額の少なさに批判が相次ぎ、4月30日に政府は支援策の拡充を発表した。

「長いこと要望していた規模別の補償がようやく出ることになりましたが、正直な話をすればグランドシネマサンシャインではゴールデンウィークだけで1日1000万円以上の売り上げが見込めていたので、数十万円というのは焼け石に水です。それでも当然ながら企業としては感染対策に協力しなくてはならない。だからこそ、しっかりとした要請を出していただいたうえで、誰が見ても、誰が考えても納得するようなかたちで人流を抑制するような施策を打ってほしいという思いがあります。

今回の4都府県の映画館の休業で一番大きな問題だったのは、東京がやっていないから川崎の映画館に行けばいいということ。これは我々にとっては想定していた事態です。京都との県境にあるシネマサンシャイン大和郡山では、前週比157%の動員でした。これではかえって人流を増加させているだけではないかと。


https://news.yahoo.co.jp/articles/7a21e70aec795d430983aecde7fb549bacab3340
5/14(金) 11:30配信