2021/05/15 05:00

 新型コロナウイルスのワクチンを巡り、自治体の首長らが、優先接種の対象となると判断したり、キャンセル分を活用したりして接種したケースが相次いで判明している。行政の司令塔である首長の接種に明確な規定がないためで、住民の賛否は割れている。

 「自分が感染すれば市政が停滞する。打ちたいと依頼した」。群馬県伊勢崎市の臂ひじ泰雄市長(68)は14日に臨時記者会見を開き、4月27日に医療従事者分の接種を受けたと明らかにした。

 国は、接種の優先順位を「医療従事者等」、「高齢者(65歳以上)」などと定めている。市内では施設の入所者らが5月6日から、それ以外の高齢者が17日からの接種だ。無職男性(87)は「私は予約さえできていない。特別扱いが許されていいのか」と批判する。一方、会社員男性(61)は「市のトップだから仕方ない」と擁護する。

 埼玉県寄居町の花輪利一郎町長(76)は、医療従事者等にあたるとして4〜5月で2回接種を受けた。町は90歳以上の集団接種を実施中で、町民に付き添う必要があるからだという。町職員約100人も少なくとも1回接種している。

 北海道小樽市や神奈川県厚木市は、医療従事者向けなどの接種で生じたキャンセル分を首長へと回した。河野行政・規制改革相は14日の記者会見で、首長が余ったワクチンを接種していたことについて、「説明責任はしっかり果たしてもらいたい」と注文を付ける一方で、「無駄にしないような対応をお願いしたい」とも語った。

 日本大危機管理学部の福田充教授は「首長の優先接種は危機管理上、合理性がある。首長が事前に説明を尽くし、透明性を確保することが必要だ」と指摘した。

ソース https://www.yomiuri.co.jp/national/20210514-OYT1T50288/