9都道府県に発出されている緊急事態宣言が、6月20日まで再延長されると決定した。4月25日から対象となっている東京、大阪、兵庫、京都は2回目の延長となった。

それに伴って東京都では、「酒類又はカラオケ設備を提供する飲食店」が引き続き休業や酒類提供の自粛を余儀なくされることに。「もう耐えられない」と、営業再開に踏み切る店が増えているといった報道もーー。

そこで実際に、通常営業の再開と酒類提供に踏み切った焼き鳥店の店主・Aさんから話を聞いた。

Aさんが経営する店は東京・池袋から少し離れた場所にあり、昨年12月にオープンしたばかりだった。ところがその約1カ月後に2回目の宣言が発出され、Aさんは店を1カ月間休業することとなったという。

当初は3月7日に宣言解除されるはずだったが、2週間の延長が決定。Aさんは「仕事をしなくては」という思いから、午後8時までの時短要請に従って営業を再開。しかし様々な努力を重ねたものの、思うようにはいかなかった。

「昼営業をやっても全然、売上は伸びませんでした。お酒は出していましたけど、ラストオーダーは19時ですからね。18時から19時までに駆け込んで来るお客さんがすごく多かったです。『全然飲めないから帰る』『その時間だと行けない』といった声もたくさんいただきました」

3月21日に宣言が解除。4月12日から「まん延防止」の措置に切り替わったことで、時短営業要請は午後9時まで延長された。しかしながら売上は変わらず、「午後8時までのほうが、駆け込みがあったのでまだ良かった」という。

■3回目の宣言では酒の提供ができなくなり……

そしてAさんが「23時までの通常営業と酒類提供の再開」を決意したのは、5月11日までとされていた宣言が延長されるタイミングだった。3回目の宣言では酒の提供ができなくなり、客足が遠のいてしまったのだ。

「焼き鳥なので、“ご飯目当て”というよりも“飲み目当て”の人が多いんです。こだわって料理を提供しているのにもかかわらず、お酒が飲めないからという理由でお客さんが入ってこない。そうした悔しい思いを、ずっとしてきました。なのに今度は時短でなく、お酒の提供自体がダメという。もう限界でした」

最近の報道では、「協力金の遅延」も問題視されている。いっぽうでAさんは税理士を通じて申請していたこともあり、協力金が滞ることはなかったという。

しかしAさんは「今後は協力金を受け取らず、要請にも従わない」と決意。理由について「正直者が馬鹿をみる世の中になってしまったから」として、こう続けた。

「『もうこりごりだ』という感じでした。なんで、飲食店ばかりが締め上げられないといけないんだと思ったんです。

だって厚労省の職員など、国側の人間が宴会に行って感染していましたよね。それに、野外で飲酒する人だって、いなくなりません。そんななかで飲食店を封鎖したって、野外で飲んでゴミが増えてしまうだけじゃないですか。まったくの無意味ですよ」

■お客さんや卸業者から感謝の声も……

昼営業やデリバリーなど様々な方法を模索してきた末、通常営業と酒類提供に踏み切ったAさん。その決断を支持する声も多く、訪れるお客さんからは「楽しい時間をすごせた」「開けてくれてありがとう」といった感謝の声も。なかには、涙を流して喜んでくれた人もいたという。

「お酒や肉を卸してくれている業者さんからも感謝されました。やっぱり閑古鳥の状態みたいで……。たとえばランチ営業をやっているときに3000円ぐらい、肉を発注したことがありました。すると『こんなときに、本当にありがとうございます』と言ってもらって胸を打たれたんです。そういう意味でも、微力ながらも力になれればという思いで営業しています」

「人流の抑制を最優先」と掲げ、酒類提供の飲食店を槍玉に挙げる行政。3度目の宣言が延長ともなれば、対策に見直しが必要なのではないだろうか。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3a80a69ecadc0445afaa0eaf4e8f0e2fea8dfc48
6/1(火) 11:08配信