7月23日開幕の東京五輪とその後のパラリンピックの観客数について、政府は21日にも「上限1万人」を正式決定する方針だ。これに対し、政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は、無観客を含めたより厳しい基準を求める提言を行うことが分かった。政府は20日に沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言を解除するが、専門家は五輪期間中に再宣言が必要になる恐れがあるとの試算を出すなど「暗闘」が続いている。

 政府の分科会は16日、緊急事態宣言と蔓延(まんえん)防止等重点措置の解除後1カ月程度の経過措置として、大規模イベントの観客を定員の50%以内で上限1万人とする政府案を了承した。政府は五輪の観客上限もこれを基準に、東京都、組織委、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)との5者協議で決める構えだ。

 一方、分科会の尾身茂会長は16日の記者会見で、1万人の観客上限は五輪・パラリンピックの観客の議論と関係ないことを政府に確認したと説明した。NHKによると、尾身氏は五輪の観客数に関して無観客開催が最もリスクが小さいことや、観客を入れる場合は現行の大規模イベントよりも厳しい基準にすべきだとの提言を出す見通しだ。

 国立感染症研究所や京都大、東北大のチームの試算では、東京五輪を有観客で開催すると、無観客に比べて東京の感染者が累計1万人増えるとした。インド由来の「デルタ株」の影響が少なく、人出が計25%増えた場合、大会中の7月下旬に、デルタ株の影響が大きい場合は7月前半から中旬にも再宣言の恐れがあるという。

 プロ野球やJリーグで制限付きで観客を動員し、クラスター(感染者集団)は発生していない。海外では、米大リーグが7月中旬までに全30球団のうち半分以上が満員の観客を受け入れる予定。サッカー欧州選手権でも多くの会場で観客を入れている。28日開幕のテニスのウィンブルドン選手権(英国)では、大会終盤の週末はセンターコートで100%を入れると発表した。

 国内では7月末には重症化しやすい高齢者のワクチン接種がほぼ完了する見通しだが、政府は専門家の提言を受けてどのような決断を下すのか。

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