三味線はゴミ箱漁ってる野良猫の皮じゃないとダメだって

橋本さんは95年3月、奈良県選定保存技術者に認定された。そのとき地元紙奈良新聞のインタビューに答え「最も評価されなかった所に、これで少しは光が当たるんじゃないですか」と胸を張っている。
 橋本さんの「しごと」の歴史は、そのまま世間の偏見と闘ってきた歴史でもある。
 「演奏する人は人間国宝と言われているのに、その材料を集めてつくる側は“ドロボー”よばわりですからね」
 特に近年の動物愛護の空気が橋本さんの立場をさらに苦しくしている。猟師(ネコを捕まえる人)は一応飼いネコは捕まえないことになっている。ただ、多くの場合、ネコは放し飼いである。目印も付けていない場合も多い。捕獲されたネコの中に飼いネコが含まれている可能性は橋本さんも認めている。当然動物保護、特に愛猫団体からの抗議は強い。キズがついていないシャム猫等飼い猫が狙われているので、やめるよう指導してほしいとの国会議員への陳情もあるくらいだ。
 キズがついてない皮が高級品であるのは事実としてシャム猫などは商品にならないらしい。「皮が柔らか過ぎるんですよ。繁華街でゴミ箱をあさってるノラ猫の方が筋肉が発達していていい音が出るんですよ。我々はきれいかどうか、なんて興味ない。いい音が出るかどうかなんですわ」