茨城県日立市の妻子6人が2017年に殺害された事件で、記憶喪失を主張する小松博文被告(36)に死刑が求刑された。水戸地裁で17日にあった裁判員裁判の論告求刑公判。小松被告は終始うつむき、結城剛行裁判長から発言を促されても「特にない」と述べた。

 水戸地裁の公判で死刑が求刑されるのは、裁判員制度が導入された2009年以降で初めて。判決は30日に言い渡される。

 「被告を死刑に処するのが相当と考える」。検察側は17日の論告で、語気を強めて死刑求刑を2回繰り返した。

 小松被告は少し前かがみの姿勢で座っていた。視線を斜め下に向けたまま、ほとんど身動きしなかった。

 弁護側は最終弁論で、事件当時は極度の緊張状態で善悪の判断能力を失っており、「殺人の故意はなかった」と強調。事件直後に出頭した点も考慮すべきだとして、「死刑はふさわしくない」と主張した。

 双方の主張が終わり、最終意見陳述のため証言台に立った小松被告。結城裁判長から「何か言っておきたいことはあるか」と問われると、「いや、特にないです」とはっきりとした口調で述べ、すぐに自席に戻った。最後まで目線を落とし、表情を変えることはなかった。

「可能な限り厳しい罰を」妻の父親訴え
 事件では、小松被告の妻の恵さん(当時33歳)と子供5人(同3〜11歳)が命を絶たれた。「どうか可能な限り、被告に対し厳しい刑罰を与えてください」。17日の公判で意見陳述した恵さんの父親は、涙で声を詰まらせながら裁判員らに訴えかけた。

 計11日間に及んだ今回の裁判では、恵さんら6人の写真をかばんに入れ、傍聴してきた。幼い頃の恵さんを肩車した時のぬくもりが今でも残っているといい、「(恵さんの)成長に寄り添うことが出来て幸せだった」と振り返った。

 「母親に似て負けず嫌いだった」「双子で仲良しだった」。孫5人の名前を挙げ、一人ひとりの思い出も語った。「『じいじ、じいじ』とたくさん呼ばれて孫たちに幸せをもらった」。声を絞り出した。

6/18(金) 20:46 読売新聞
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