「カキフライの自動販売機を開発した理由は、コロナウイルスの感染拡大とまったく関係がありません」

そう話すのは、カキフライ自販機を設置した「株式会社 ファームスズキ」の鈴木隆社長。ファームスズキは瀬戸内海にある離島、広島県の大崎上島町で塩田跡を活用し、カキと車エビを養殖している。自社の製品を「自販機で売ろう」と考えたのは、今から3年前のことだった。


「大手の自販機メーカーに企画を相談したのですが、『そのレベルの冷凍自販機を作るなら、最低でも1000台からの注文でないと難しい』と言われてしまいました。1000台もの自販機を発注できるだけの資金は当社になかったので、別の方法を考えました」

鈴木氏が考えたのは、相談に乗ってくれたメーカーの既成品の冷蔵自販機を購入し、自分たちで冷凍用に改造するという方法だった。一般的な自販機は1台50万〜60万円程度だが、鈴木氏は120万円のハイスペックモデルを購入。
冷凍食品の販売を実現するには、ハイスペックなモデルでないと難しかったためだ。一般的なモデルと比べて倍以上の値段がしたが、それでも数年で減価償却できるはずという勝算があった。

「1本150円のジュースを売るのでは、120万円の自販機の減価償却までに時間がかかります。しかし、われわれが売ろうとしているのは単価1000円以上のカキフライや生食用カキです。これならイケるだろうと思いました」

カキフライの自販機は、改造費も含め、1台当たり総額450万円ほどになったという。利益を出すには毎月約50万円の売り上げが必要となる。


 虎ノ門ヒルズに出店した理由は、単価1200円の冷凍カキフライを買ってくれる人が多いだろうとの計算からなのか。

「虎ノ門ヒルズだと、オフィスを利用する人が平日に購入してくれます。リピーターも多く、全体の約3割程度を占めています。日本で多く流通している冷凍食品のカキフライは、小ぶりなカキに、添加物や調味料を多量に入れた衣をつけて揚げているものが多いです。
しかし、当社で作るカキフライは、鮮度の良いカキに、有名レストランでも使われている無添加の生パン粉を使用しています」

 スーパーの総菜コーナーに置かれているようなカキフライは、その分だけ価格も安くなっている。しかし、「高くてもおいしいカキフライが食べたい」と思ったとき、わざわざ専門店や高級店に行かなくても買える自販機は手が出しやすい。

「『1200円のカキフライ』というと高価に感じますが、生でも食べられるクオリティのカキ、保存料や調味料不使用の衣を使用しているので、味は保証します。
今は共働き家庭が増えるなどし、揚げ物をしたくても時間がとれない人も多く、市販の揚げ物の需要は高まってきていると思うので、今後は、添加物や調味料不使用の衣を使っていることなど、商品のこだわりをよりアピールして、多くの人に手に取ってもらいたいですね」

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2021.6.18 20:30
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